(34)この施設なら、母は最期まで安心して暮らせるのではないか
ただし、ひとつ問題があった。現在は満室で、すぐに入所することはできないということだ。空きが出る見込みについて尋ねると、「すでに看取りの段階に入っている方がいるため、おそらく2週間から1カ月以内には空室になるでしょう」との返答だった。
この言葉を聞いたとき、私は少し戸惑った。それまで、母が施設に入所するということは、単に生活の場を移すことだと考えていた。しかし現実には、そこで人生の最期を迎える入居者もいる。すべての施設が看取り介護を行っているわけではなく、終末期を見据えた運営方針を持つかどうかは施設ごとに異なるということも、このときに初めて意識した。
この施設は、看取りまで対応しているという点でも大きな安心材料になった。退去や転院を繰り返すことなく、母が暮らし続けられるかもしれない。そう判断し、私はここを第1候補として準備を進めることに決めた。
具体的な日程は未定のままだが、施設側もその意向を受け入れてくれた。母と施設側との面談が、次の課題となった。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。