訪問診療は医療的役割だけでなく地域の「見守り役」としても重要
「独り暮らしで身寄りもない方です。このままご自宅で亡くなられた場合に警察の介入が必要になる事態は避けたいので、訪問診療をお願いしたいのです」
ある日、日頃から連携しているケアマネジャーさんから、そんな相談の電話がありました。対象となったのは、高血圧で降圧薬を服用している70代の男性の患者さんでした。
この方は以前、骨粗しょう症の影響で右脚の大腿骨頭が壊死し、「大腿骨頭置換術」を受けて金属またはセラミック製の人工骨頭に置き換えていました。しかし、その後再び骨折し、手術ではなく薬などによる保存的な治療に切り替えている状態でした。
しばらくは週に1回、訪問看護師による入浴介助とリハビリを受けつつ、近隣の診療所へはヘルパーの付き添いで通院していましたが、2週間ほど前から急にADL(日常生活動作)のレベルが低下し、自力での通院が困難に。そのため、在宅での療養が必要となったのです。
初めてご自宅を訪問した際には、経済的な不安を強く抱えておられ、訪問診療にかかる費用を何度も気にされていました。そこで、現在の収入に応じて診療が可能であること、また病状の変化に応じて費用が増える可能性もあることを丁寧に説明し、きちんとご納得いただきました。