(3)9カ月ぶりに会った母は記憶とはまったく違っていた

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 古くから地域にある精神科病院に「いますぐ連れていって私を閉じ込めてほしい」という母の切羽詰まった電話に異変を感じ、私は慌てて故郷への飛行機を予約した。

 翌日、2匹の猫たちの餌をたっぷりとボウルに入れ、誰ひとり告げることなく羽田空港へと急いだ。2020年7月の出発ロビーは、これまでに見たこともないほど閑散としていた。「東京の人間は決して他県に行くべからず」という圧力がとても強かった時期だ。

 空港からバスに乗り、9カ月ぶりに実家に到着すると、そこにいたのは私の記憶とはまったく違う母の姿だった。痩せこけて目が落ちくぼみ、あたりをうかがうようなおびえた顔つきをした、小刻みに震える老女だったのだ。

 母は農家に生まれ、幼い頃からずっと重労働をしていたと聞いていた。「おかげで足腰が丈夫に育ったし、腰も曲がらなかった」と、当時の苦労を笑い飛ばして、元気に暮らしていたはずだった。

 父親に聞くと、年明けから食欲がなく、このところほとんど何も食べたり飲んだりしていないようだったという。

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