(36)「最善の施設を選んだのだ」と自分に言い聞かせた

公開日: 更新日:

 もっとも重要だったのは、実家に近い場所にあることだった。母は長年、同じ地域で暮らしてきた。正確な位置を把握できなくなっているとしても、慣れ親しんだ周辺環境の中で生活するほうが安心感につながるのではないかと考えた。

 仮申し込みを済ませた施設は、条件と予算を満たしていた。コロナ禍の影響で事前の見学はできなかったが、通院付き添いの有無、居室の設備、費用などを電話で確認していた。電話対応も明快で、質問にも一つずつ丁寧に答えてもらった。すでに必要書類も取り寄せ済みだった。

 下見ができないまま選ぶという不安はもちろんあった。ただ、限られた条件の中で判断するしかない以上、情報収集と対応の過程で得られた印象を頼るしかなかったのだ。今、取れる最善の選択をしたのだと私は自分に言い聞かせた。

 それからは毎日、空きが出たという連絡を待っていた。タイミングは予測できなかったが、いつ入所が決まっても対応できるよう備えておく必要があった。それまで入院していてもいいと病院が言ってくれたことが、本当にありがたかった。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    《タニマチの同伴女性の太ももを触ったバカ》を2発殴打…元横綱照ノ富士に大甘処分のウラ側

  2. 2

    日本ハムは「自前球場」で過去最高益!潤沢資金で球界ワーストの“渋チン球団”から大変貌

  3. 3

    高市首相が天皇皇后のお望みに背を向けてまで「愛子天皇待望論」に反対する内情

  4. 4

    年内休養の小泉今日子に「思想強すぎ」のヤジ相次ぐもファンは平静 武道館での“憲法9条騒動”も通常運転の範囲内

  5. 5

    新庄監督にガッカリ…敗戦後の「看過できない発言」に、日本ハム低迷の一因がわかる気がした

  1. 6

    『SHOGUN 将軍』シーズン2撮影中の榎木孝明さん「世界的な時代劇映画のプロデュースに関わりたい」

  2. 7

    横綱・豊昇龍が味わう「屈辱の極み」…大の里・安青錦休場の5月場所すら期待されないトホホ

  3. 8

    和久田麻由子アナがかわいそう…元NHKエースアナを次々使い潰す日テレの困った“体質”

  4. 9

    あの細木数子をメロメロにさせて手玉に…キックボクサー魔裟斗のシタタカさ

  5. 10

    細木数子と闘った作家・溝口敦氏は『地獄に墜ちるわよ』をどう見たか? “女ヤクザ”の手口と正体