(1)奈良県立医大オリジナルのめまいのセルフケアが世界で注目
めまいは原因が分かりにくく、たとえ原因が分かっても薬ではなかなか改善しないことが多い、厄介な症状です。本記事のタイトルを見て、「『ヘッドアップ就寝治療』なんて聞いたことがないけど、どんな治療なの?」と思った方もいるかもしれません。
ヘッドアップ就寝治療とは、その名の通り“頭を高くして寝る”という方法です。私がセンター長を務める奈良県立医科大学付属病院めまいセンターで考案したセルフケア法で、エビデンスに裏付けられた治療法として2020年にノルウェーの医学雑誌に掲載され、世界的に注目を集めました。布団や毛布、クッション、座布団などを使えば今夜からでも始められる手軽さが特徴で、原因が不明、あるいは薬で改善しないめまいに悩んでいる方にぜひ試していただきたい方法です。
具体的な方法を紹介する前に、めまいについて少し説明しましょう。めまいには、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)や心臓疾患(心筋梗塞・大動脈解離)など命にかかわるものと、そうでないものがあります。
一般的には命にかかわらないめまいが圧倒的多数を占め、その中でも最も多いのが良性発作性頭位めまい症(BPPV)です。めまいセンターを2014年から18年までに外来受診した患者1520例を分析したところ、命にかかわる脳血管系のめまいはわずか1%であり、40.2%(611例)がBPPVでした。他施設の統計でも、全めまい患者の約4~5割をBPPVが占めるという結果が出ています。