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【王子駅編】飛鳥山公園脇にわずかに残る“昭和の灯”

 春には花見で賑わう北区王子の飛鳥山公園。線路との間の谷のような場所にひっそりたたずむ飲み屋街に気づいたのは、十数年前か。木造2階建ての古びた長屋は今にも崩れ落ちそうでいて、しかし簡単には死なぬ村の長老的なオーラを発散していて、若輩には簡単に近づけない存在感があった。

 今月の某日、王子で用があった帰り道、電車に乗る直前にふと「寄ってみようか」と思いついた。理由はない。人生はひらめきとタイミング。迷わず、足を向けた。

 山の頂上へと客を運ぶモノレールの傍らの小道にある「さくら新道」がそれ。昭和28年に建てられた。かつては長屋が3棟あったが、6年前の火事で2棟が消失。現在は残る1棟で、1軒がネオンをともすのみ。その「M」というスナックの扉をおもむろに開けた。

 中は意外と広く、10メートルほど奥までカウンターが続く。壁の片隅にはピンク電話や壊れたジュークボックス。レトロな空間に年季の入ったママがカウンターの中にちょこんと座っている。体は痩せ細り、顔のしわは深かったが、高級そうなブラウスは折り目もしっかり。

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