山本一力
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山本一力作家

1948年、高知県生まれ。東京都立世田谷工業高校電子科卒業後、広告制作会社勤務等を経て97年「蒼龍」でオール読物新人賞を受賞。2002年「あかね空」で直木賞を受賞。「損料屋喜八郎始末控え」や「ジョン・マン」などシリーズ作品の他「欅しぐれ」「紅けむり」「千両かんばん」など著書多数。

【お題】「24時間、働けますか」育ち 定時退社が理解不能

公開日: 更新日:

 からすカアの夜明けで、井戸端で洗顔し朝飯を食って、仕事場へと出た。

 いまの午前7時には仕事場に着き、暮れ六ツ(午後6時)の鐘まで、ひたすら働いた。

 四ツ(午前10時)、正午、八ツ半(午後3時)に休憩をとることで、仕事にリズムが生まれた。 手の遅い者には、早い者たちが助けに回った。

 暗いなかでの居残り仕事では、質が落ちた。

 現場を束ねる者は、仕事の進め方を差配した。全員で取り組むという、基本を遵守しながら。

 我が団塊の世代は、高度成長期を始まりから終幕まで体験してきた。

 社会全体が驀進状態。残業は当たり前だった。部署の全員で手分けしてこなしたことで、相互に信頼感が育まれた。

 仕事はひとがこなすものだ。ともに汗を流してこそ、気持ちは通じ合う。

 ひとり定時の繰り返しからは絆は結ばれない。 とはいえあの時代、労働争議やストも多発した。が、御上から働き方にまで指図されはしなかった。

 仕事の絶対量は個々に違っていて当然だ。それをひと括りにして基準を制定するなど、おとなの考えることではない。

 ゆとり教育時の混乱を、またも繰り返すのか。

 仕事は生き物。お仕着せのひとり定時は、成長の足を引っ張るだけだ。

【連載】山本一力 心が楽になる江戸の知恵

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