志村3丁目「カフェ・ベルニーニ」物販と飲食の“二毛作”
自家焙煎珈琲屋「カフェ・ベルニーニ」に入ると、奥に大きなロースターが見える。一度に5キロの豆を煎ることができるという。店の広さを考えると、失礼ながら大き過ぎるのではないか。
もうひとつ疑問に思ったことがある。営業時間は13時から19時まで。しかも毎週火曜日と水曜日は定休日だ。
これで経営は成り立つのか。
代表の岩崎俊雄さん、チーフロースターの岩崎健一さん親子は、この素朴な疑問に答えてくれるばかりか、喫茶店受難の時代にオンリーワン店がその存在感を示す方法も教えてくれた。
ベルニーニはコーヒー豆の販売と飲食の「二毛作経営」である。
まず物販を説明しよう。用意している豆はストレートとブレンドで、21種類。そのほか、スペシャルティーも手掛ける。顧客は北海道から沖縄までに及び、その客に届けるために大きなロースターが置かれている。
「焙煎方法は掟破りかもしれませんね」と俊雄さんは笑う。一般に生豆は高温で煎るが、ベルニーニは、じわじわ火を通す。コーヒーを入れるのに不慣れな人でも、おいしいコーヒーが抽出できるようにするためだという。
ベルニーニのコンセプトははっきりしている。ひとつはコーヒー専門店の味を家庭で簡単に再現できるような豆を売るということ。だから、豆はじっくりと焙煎する。
「営業時間が短いのは、焙煎と接客の両立が難しいからです。火曜日と水曜日は焙煎に充てる時間でもあります」と健一さんは言う。
もうひとつのコンセプトは、その豆で、客が自宅でおいしいコーヒーを飲めるように入れ方を伝授すること。このため飲食スペースは「入れ方教室」という色彩が強い。
素人の筆者には新鮮だった。これまで、いくつもの「こだわりのコーヒー」の入れ方を見てきた。どれもこれも見事なのだが、その手さばきは「他に真似のできない味を出す」という職人気質が垣間見えた。
対するベルニーニは、そうしたノウハウともいえるものを余すところなく客に伝授することを経営の基本姿勢に据えている。2人はそれを当たり前のように話すから、なおさら驚いたのかもしれない。