亀戸「珈琲道場 侍」は“四天王” 武道と相通ずる接客が魅力
誰が言ったか知らないが、「東京珈琲四天王」という言葉がある。「珈琲道場 侍」はその一角だ。
定番のブレンドはニカラグアにあるカサブランカ農園の豆がベース。
注文ごとに豆をひき、ドリップで入れる。お湯の温度は92度。これを4回に分けて注ぐ。深くもなく、浅くもない絶妙な味わいだ。
もうひとつの人気商品である水出しコーヒーはホンジュラス産の豆を使う。甘味とコクを出すために、冷水で8時間かけて抽出。これを一晩寝かせて提供する。「水出しだからカフェインとかタンニンが出にくいんですよ」と店長の春日孝仁さん(写真)は言う。
確かにうまい。「これが四天王の味か」などと思っていると、春日さんはこんなことを言い始めた。
「四天王といわれているほかのお店の中には、サミットで来日した海外の要人にコーヒーを振る舞ったところもあります。それに比べればうちは足元にも及びませんよ」
では、なぜ四天王?
「自慢できるところがあるとすれば接客です」
接客の良さを誇る店は少なからずある。その類いと思いきや、話を聞くと、かなりの筋金入りだった。
「オーナーは、大東流という合気柔術を受け継ぐ家系の次男です。商売を始めるのに何がいいかを探し、武道と接客には相通ずるものがあると考えて、このお店を開きました」
武道は礼に始まり、礼に終わる。だから、来店客には「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」は欠かさない。
「それは当たり前」と思うだろう。しかし、テーブルに置かれた灰皿の位置、商品の出し方、数人で来た客の誰に伝票を渡すかといった細部にまでこだわるとなると、「それはなかなか真似のできないことだろうな」と思うようになった。