牧野伊三夫
著者のコラム一覧
牧野伊三夫画家

1964年生まれ。画家。美術同人誌「四月と十月」同人。著書に「かぼちゃを塩で煮る」(幻冬舎)、「僕は、太陽をのむ」(港の人)ほか。北九州市情報誌「雲のうえ」、飛騨産業広報誌「飛騨」編集委員。

雹が降った翌朝…羽がほとんどないアゲハ蝶が庭の隅に

公開日: 更新日:

 今年の5月4日のこと。その日は朝から晴れていたが、午後になってにわかに冷たい風が吹き、空に黒い雲が垂れ込めてきた。やがて雷鳴がとどろいたかと思うと、屋根の上からトントントンという聞き慣れない音が聞こえてきた。何だろうと思っていると、妻が突然、

「うわあ、雹が降ってきたわよ」

 と叫んだ。窓の外ではドロップ玉ほどの大きな氷の粒がはね上がり、みるみる積もっていった。

 その翌朝、庭の隅で、蜂のような虫がバタバタと地面を転げまわっているのを見つけた。よく見ると羽がほとんどないアゲハ蝶であった。きっと昨日の雹に破られたに違いなく、もう飛ぶことができないから、きっとこのまま死んでいくしかないだろう。

 羽を奪われた蝶とは、なんともみじめな生き物である。僕は、自分がもし、こんなふうに体の自由を奪われたらどんな感じがするであろうかと想像して、ぞっとしていた。どうにも見ぬふりをすることができず、かがんで手を差し伸べると、なんとそのアゲハ蝶が指を伝って手のひらに乗ってきたのである。蝶がこんなふうに近寄ってきたのは初めての体験で、しばらくそのままじっとしていると、いまにも声を発して僕に助けを求めるようにゆっくりと腕から肩へ、さらに頭へと登ってくる。

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