地元の思い出と噛み締める水餃子「哈尓濱(ハルビン)」
僕が生まれ育った大阪府茨木市のJR茨木駅のすぐ近くに、水餃子がおいしい哈尓濱(ハルビン)はある。チャリンコに乗って自宅から母校春日丘高校へ通う途中の路地に1983年に開店した。偶然にも僕がレコードデビューした年で、ともに36年間歩んできた。
初代のおっちゃんは戦時中に10代で旧満州に渡り、炭鉱で働きながら炊事係をされていた。その時に食べた水餃子の味がずっと忘れられず、大手建材会社を56歳で早期退職して念願の店をオープンさせた。地元で評判となり、僕も早々に常連になった。
寡黙なおっちゃんとは裏腹に、ともにカウンターの中に立つおばちゃんは豪快かつにこやかで、紫色に染めた髪の毛が印象的だった。うかがうたびに、はよ結婚しーや! と、ずっと言われ続けた。誕生日にはいつもケーキで祝ってくれたし、市民会館でコンサートをした時は係の人に「美女が来た、と嘉門ちゃんに伝えて!」と言って、楽屋に花束を抱えて来てくれたこともあった。