世界遺産「熊野古道」中辺路を歩く~和歌山・田辺市白浜町

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 熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の熊野三山を参拝する熊野詣で。その歴史は古く、平安時代から盛んに行われてきた。熊野は蘇りの地といわれ、道中は困難が多いほど御利益は大きいとされるため、中辺路から目指す人は多い。記者も歩いてみた。

  ◇  ◇  ◇

「熊野三山」は全国の熊野神社の総本宮で、真言密教の根本道場「高野山」、修験道の拠点「吉野・大峯」とともに世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」(2004年登録)を構成する霊場だ。参詣道は、それら霊場を目指す道で「熊野古道」と総称されている。

 その中で、京都と大阪から熊野に向かうメインルートが「紀伊路」だ。これは田辺で紀伊山地に入る「中辺路」と、海岸線を南下する「大辺路」の2つがある。

 中辺路はその昔、上皇たちの御幸道でもあり、熊野九十九王子という御子神がまつられている。「険しい」といわれるだけあってアップダウンが激しく、途中、滑りやすいところもあったりと、なかなかハード。一般的なルートは「滝尻王子」からスタートだが、今回は見どころが詰まっている終盤の「伏拝王子」から「熊野本宮大社」までを歩いた。

熊野本宮大社を望む「伏拝王子」

 まずはのどかな風景が広がる伏拝の小さな集落からスタート。旅人のノドを潤したといわれる菊水井戸を過ぎると、いよいよ「蘇生の森」といわれる熊野の森へ入る。慣れた足取りで抜かしていくベテランや参拝を終えた老夫婦とすれ違いながら、木漏れ日が美しい林道を進むと、旧社地「大斎原」の森を望む高台に到着。苦行の道のりを経て、初めて熊野本宮大社を見ることができる場所で、来た人々が思わず伏して拝んだことから「伏拝王子」と名づけられた。

 ここには平安時代の歌人・和泉式部の供養塔もある。京都から参拝に来た和泉式部は同地に差し掛かった時に生理になってしまう。当時の神は不浄を嫌うといわれていたため、参拝ができなくなったと思い、悲しみの歌を詠んだという。ところが、「浄不浄を問わず、貴賎にかかわらず、男女問わず」とすべての人を受け入れる神・熊野権現が枕元に現れて、返歌で参拝を促した。それによって和泉式部は無事、参ることができたという。

「身分、男女の別、さらに障害者も含め、あらゆる人を受け入れる懐の深さゆえに、熊野は古くから人々を引きつけるのです」(熊野本宮語り部の会・加藤恵美代さん)

 さらに古道を進むと三軒茶屋跡だ。高野山に続く小辺路と中辺路の分岐点で関所があった場所である。そろそろ汗ばんできたところだったのでここで小休憩を取ってから江戸時代から残る石畳を上ると、ようやく本宮大社に到着だ。出迎えてくれるのは、神の使いとされるヤタガラスが乗った黒いポスト。葉の裏に文字を書けるとして葉書の語源ともなった「多羅葉」の木の下に設置されている。

 一礼して神門をくぐると美しい桧皮葺の社殿が姿を現す。参拝には順序があり、①本宮の主神・家都御子大神②新宮の主神・速玉大神③那智の主神・夫須美大神④最後に天照大神となるそうだ。事前に案内版を確認するとよい。大鳥居建立20周年となる5月11日まで用意されている特別御朱印(500円)も手に入れておきたい。

 日本最大(高さ34メートル)の鳥居がある「大斎原」は国道を渡って10分ほど。

(問)熊野本宮大社(℡0735・42・0009)

 参拝を終えた後は地産地消にこだわった食事を楽しもう。大斎原のほど近くにある「くまのこ食堂」(℡0735・30・0878/月・火曜定休)は古民家を改装したレストラン。熊野でとれたお米や野菜、ジビエなどを提供している。

 オススメは地元の猟師から仕入れた「ロースト鹿肉丼」(1400円)。わさびとにんにくの醤油ソースが素材を引き立てる一品だ。

「熊野の鹿肉は血抜きの処理をしなくてもいいくらい新鮮で臭みがないのが特徴です」(店主の森岡雅勝さん)

レンタサイクルで海岸巡り

 空港からほど近い南紀白浜ではレンタサイクルを使った海岸巡りが人気。世界最大規模の自転車メーカー「GIANT」の「ジャイアントストア南紀白浜」(℡0739・34・3196/火曜定休)の店舗で借りられる。

 景勝地として名高い穴の開いた「円月島」まで青い海と白砂を横目にのんびりと巡り、万葉の昔から残る名湯「崎の湯」まで戻って海が間近に見える湯つぼに入り汗を流すぜいたくなコースがオススメだ。

世界で唯一「入浴できる世界遺産」

 熊野古道には世界遺産の一部として登録された温泉もある。1800年前に発見され、「日本最古の湯」と伝わる「湯の峰温泉」(℡0735・42・0074)の天然岩風呂「つぼ湯」だ。一日に7回色が変わるという、入浴できる世界遺産である。

 もうひとつの楽しみが、世界遺産で作る温泉卵。90度のお湯が湧く「湯筒」に卵を入れて10分で出来上がる。入浴料は大人780円、12歳未満470円。

(取材・文=古川辰文/日刊ゲンダイ)
 
 

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