謀反の背景とは?「本能寺の変」の真相に迫る琵琶湖の旅

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 天正10(1582)年の「本能寺の変」は日本の歴史上、最も有名な事件だろう。独創的で先進性に富んだ織田信長は高度なテクノロジーに囲まれて暮らす現代人をも心酔させるカリスマだ。その英雄に反旗を翻し命を奪った明智光秀は史上最も有名なヒールとなった。ただ、光秀が「敵は本能寺にあり」と発するに至った背景は、いまだにはっきりしない。敵味方に分かれる前の2人が深く関わった琵琶湖を訪れた。

 ◇  ◇  ◇

■安土城の天守を再現

明智光秀と琵琶湖」の著者で、琵琶湖の文化史を研究する滋賀県文化財保護協会普及専門員の大沼芳幸さんは、謀反の原因について「およそ200ぐらいの説がありますが、いずれも決定的な証拠はありません。今や真実の解明は不可能でしょう」と言う。

 よく語られている原因説のひとつが、徳川家康を招いた安土城での宴席で接待役を命じられた光秀が、信長に叱責されたことだ。舞台となった安土城は本能寺の変の後に何者かによって焼かれているが、石垣や石段は残っている。天守があった山頂まで登ることも可能(拝観料700円)だ。

 日本で初めて本格的に備えられた天守閣は「安土城天主 信長の館」(入場料610円、℡0748・46・6512)で復元展示されている。1992年の「スペイン・セビリア万博」の際に日本館の目玉として建造された最上部の5、6階部分を移築したもので、10万枚の金箔を使った外壁や金箔のしゃちほこをのせた大屋根も追加で再現された。発掘調査や研究資料に基づき制作された15分間のCG映像も見られるので、3年で燃え落ちた「幻の名城」をリアルに感じられる。

 安土城があった安土山は現在、森や畑に囲まれた中にあるが、築城された頃は琵琶湖に突き出た半島だった。安土城考古博物館(入館料500円、℡0748・46・2424)で安土城跡の復元模型を見ると、安土城が琵琶湖を臨む水城だったことが確認できる。

「信長は、楽市楽座の政策でも分かるように経済を重視した武将でした。経済力で軍事力を増強し、天下布武を目指したのです。そのためには物流の中心だった琵琶湖を掌握する必要がありました」(大沼芳幸さん)

 当時の琵琶湖は北陸や東国からの物資を京へ運ぶ水運の要であり、莫大な利益を生む源泉でもあった。それを支配していたのが、東国の荘園から大量の物資が届けられた延暦寺。1571年の「比叡山焼き討ち」の背景には、「琵琶湖をめぐる主導権争いがあった」(大沼芳幸さん)というわけだ。

光秀が眠る西教寺

 焼き討ち後、信長の命を受けた光秀は、湖水輸送の最終地・坂本に水城を築いた。ポルトガル人宣教師のルイス・フロイスは著書「日本史」で、この坂本城を安土城に次ぐ日本第2の城と紹介している。ところがこの名城も、光秀の女婿・明智秀満が自害する際に火を放ち焼失。一度は再建されたが、豊臣秀吉が廃城とした。おかげで築城当時の見るべきものはほとんど残っておらず、坂本城址公園に光秀の銅像が立っているだけだ。

 坂本城の城主となった光秀は、比叡山の裾野の高台にある西教寺(拝観料500円、℡077・578・0013)の檀徒となった。焼き討ちで被害に遭った建物の復興にも力を尽くしたという。境内には光秀の供養塔や妻・煕子と一族の墓が建立されている。

「光秀は坂本の暮らしを気に入っていたし、琵琶湖が生む利益で家臣たちを養っていました。ところが信長から、秀吉の中国攻めの援軍を命じられた際に近江を取り上げられます。坂本を離れて出雲と石見でまたゼロからのスタートをしなければならなくなった。当時の光秀の年齢は確定されていませんが、高齢だったのは間違いない。60歳を越えていた可能性もあります。私は、この“不当な人事”が謀反の引き金だと推測しています」(大沼芳幸さん)

 信長は安土城、坂本城、秀吉の長浜城、それと甥で光秀の娘と結婚した津田信澄の大溝城と4つの水城で琵琶湖を支配した。大溝城跡には築城時の石垣が残り、天守台に登ることもできる。

「饗応膳」を再現した豪華ディナー

 光秀が家康をもてなした献立は「休暇村近江八幡」(℡0748・32・3138)で再現されている。四条流包丁書や大草家料理書などを参考にした「信長饗応膳」がそれで、味付けは現代風にアレンジしてあるのでおいしい。一頭買いしている近江牛のすき焼きも付いた豪華なメニューだ。琵琶湖を眺めながら入る天然温泉にも癒やされる。

神秘の島「竹生島」

 琵琶湖の北部に浮かぶ竹生島(入島料500円)は、古くから神が宿る島として信仰を集めてきた。現在は西国三十三所観音霊場第30番札所の宝巌寺と国宝の本殿を持つ都久夫須麻神社があり、年間15万人が訪れる人気のパワースポットとなっている。

 オススメは大津港から竹生島まで一直線で目指す「縦走クルーズ」(要予約)。地元在住の画家・今森洋輔さんの解説を聞いていると2時間15分もアッという間だ。竹生島から今津港か長浜港に行く乗船料込みで片道4300円。4月25日から11月20日までの週末を中心に開催される。詳しくは琵琶湖汽船予約センター(℡0570・052・105)まで。

(取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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