禅寺が企画 お墓参りカードゲームがクラファンで目標越え
昨今、大人向けのカードゲームが盛り上がりを見せている。中でも、心理戦や言葉遊びなどに特化した、さまざまなバリエーションと個性豊かなカードゲームがここ数年増えているのだ。
そんな中で、一風変わったカードゲームが誕生した。その名も「盆暮れ正月両彼岸」。ズバリ、「お墓参り」をテーマに作られたカードゲームで、企画発案、制作進行を手掛けたのは“お坊さん”。
なぜ、お墓参りを題材にしたカードゲームを作ったのか。東京・深川の禅寺「陽岳寺」の副住職である向井真人さんに話を聞いた。
「新型コロナウイルス感染症は生きている人たち同士の関わりを分断するだけでなく、亡くなられた方との関わりも分断しているように思います。実際『お墓参りができない』という声を昨年から耳にする機会も増えました。それならば、お墓参りの時にしていることを、楽しみながらやってもらおうと考えたのが“盆暮れ正月両彼岸”誕生のきっかけです。お墓参りは、『故人へのオモイを示す場所』『亡くなった方と死後あらためて出会うこと』を目的とするものです。それを“盆暮れ正月両彼岸”のルールにも反映させています」
例えば、もし、プレーヤーがおばあちゃんへの“オモイ”のカードを持っていたら、おばあちゃんへのお墓参りミニゲームをしないといけない。また、おじいちゃんへのお墓参りミニゲームで勝つと、おじいちゃんについて一言話すことになる。
「故人を偲ぶという言い回しがありますが、偲ぶとは『なつかしく思い出すこと』。なつかしく思い出すことで、反面教師にしたり、新しい自分を見つけたり、今の私たちのいのちを豊かにしてくれると思うのです」(向井副住職)
新しい広がりの兆し
ちなみに今作はクラウドファンディングで目標額10万円とし、結果45万円という支援を集めた。どのような人が支援をしてくれたのか?
「今までお寺や仏教をテーマにしたボードゲームを5年以上作ってきましたが、過去のお寺ボードゲームはお寺メインに広がりを見せていました。ですが今作は、ボードゲーム好きな方の支援もいただき、それが大きい収穫だと感じています。お寺界隈発のゲームが、純粋にゲームを愛するゲーマーの元にも届いていくという新しい広がりの兆しを感じることができました」(向井副住職)
お墓参りは知っていても、それがどのような成り立ちで始まり、どんな意義があるのかまでを理解している人は、実はあまり多くないのかもしれない。だからこそ、カードゲームという別の視点を通して、お墓参りが命を継承していくための重要な場であることを知り、遊びの中から学べるメリットを生かした今作に支援が集まったのだろう。