小西洋一さん ワインや日本酒でまったりして俳句の世界へ
「量を控えて、おいしく、そして長く、いつまでも」
これが小西洋一さん(65歳)の酒の流儀。「365日飲まない日はほぼありません。若いころはシングルモルトと一緒にシガーなんて洒落ていましたが、いまはワイン、日本酒といった醸造酒ばかりです」と笑う。小西さんは、雑誌「Nan?da」の編集長、雑誌「日経トレンディ」の副編集長などを務めた後、KKベストセラーズへ。26年ほどの間に、雑誌、書籍、そして写真集も手がけた。天才アラーキー(荒木経惟氏)撮影の白都真理、三原じゅん子、浅香唯、鈴木砂羽などの写真集は発売当時大きな反響を呼んだ。「三原さんとはゴルフもご一緒しました。飛ばし屋で小技もうまい。まさか国会議員になるとは……」と述懐。同社を退社後は、春燈社を設立し出版プロデューサーとして活躍。
大学時代からミニコミ誌や当時としては先鋭的な雑誌の編集などに携わっていた。一方で小説も手がけ、講談社「小説現代」新人賞佳作受賞の経歴も持つ。また出版社勤務の傍ら、有栖川寧名で女性漫画の原作者として活躍。「日本児童文学者協会」の会員で、児童文学の著作もある。
藤沢周平行きつけの店に通ううちに…
そんな小西さんが「読むツマミ」として挙げたのは、俳句少年でもあった寺山修司の自選代表句集「花粉航海」、藤沢周平「決闘の辻」、江戸川乱歩「陰獣」、吉川英治「私本 太平記」など。ちなみに小西さんの手元にある初版本「花粉航海」は寺山の一番弟子で、自らも岸田戯曲賞を受賞した劇作家・岸田理生が寺山から譲り受けたもの。「それがたまたま岸田さんとのご縁で私の手元に……」と小西さん。また生前、練馬区大泉に居を構えていた藤沢周平だが、小西さんも大泉在住。「藤沢周平の馴染みだった寿司店や蕎麦店に通ううちにさらに好きに」とも。ボブ・ディラン「ボブ・ディラン自伝」、カルロ・ロヴェッリ「時間は存在しない」、澁澤龍彦「三島由紀夫おぼえがき」なども……。
そして、現在のイチ押しは俳句界の重鎮だった藤田湘子の「20週俳句入門」。「もともと、俳句が好きで、30年くらい前からやっていましたが、この本はタイトル通り、20週かけて俳句の基礎から高度なことまで何度も反復して身につけていく構成」と推奨。そのうえで「最近はとにかく早寝。頭が冴えるシングルモルトは卒業。ワインや日本酒を楽しんでまったりとした気分のまま、俳句の世界に入り、やがて寝落ちするのが一番。俳句には醸造酒」とニッコリ。