中小食品業に漂う“壊滅危機”の予兆…倒産件数が3年ぶり前年比増、潰れた4割が卸売り
「また値上げ 節約生活 もう音上げ」「ついてけぬ 物価上昇 子の会話」──。第一生命保険が26日、「サラっと一句! わたしの川柳コンクール」(旧称「サラリーマン川柳」)の入選作100句を発表。切ない川柳からは、物価高騰をめぐる悲哀が浮かぶ。
原油高や原材料費の高騰、円安などを背景に足元では食品値上げが続いている。丸大食品は26日、ハム・ソーセージや調理加工食品など334品目について、4月1日から最大30%値上げすると発表した。同社は昨年4月と10月にも値上げを実施しており、今回が3回目だ。
ただし、経営体力のある大手は商品に価格転嫁できても、中小・零細はそう簡単に転嫁できず、“壊滅危機”の兆しを見せている。
東京商工リサーチ(TSR)が26日公表したリポートによれば、昨年の食品業の倒産件数は535件。3年ぶりに前年を上回った。倒産した食品業のうち約4割が卸売りだ。TSR情報本部の坂田芳博課長がこう言う。
「新型コロナ禍の長期化によって、政府の企業への支援効果が薄れてきたことが背景にあります。特に卸売りはコスト増に加え、コロナ禍の大型イベントなどの中止・延期により、業務用の販売などが振るわなかったことが他の業態に比べて倒産が多い要因でしょう。コスト増を価格転嫁したくても、中小・零細は取引先とのパワーバランスもあって、すんなり値上げするのは厳しい。この先も中小・零細を中心に倒産や廃業が増えていくと考えられます」