【能登半島地震 現地ルポ】「私たちも被災者」被災地で働く人々の過酷な現状

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「社員寮は停電、断水状態で、もう10日以上、風呂に入れていません。金沢市内まで行けば入浴も洗濯もできるが、これだけ道が悪いと往復5時間はかかる。そんなことをしていたら寝る時間なんてない。親方は自宅の被害がひどかったので、避難所と現場の往復生活。こうして働いている私たちも被災者なんですよ」

 普段は入浴と同時にひげ剃りでスキンヘッドにしていたというが、支給された生活水だけではろくに剃毛もできない。「見てくださいよ」とヘルメットを外した頭は、伸び始めた白髪交じりの数センチの髪でびっしり覆われていた。

 被災地では、インフラ整備以外にも、エッセンシャルワーカーの手が必要になる。珠洲市の老人ホームで働く60代女性はこう吐露した。

「余震で家が倒壊するかもしれないので、最初の4日間は車中泊。朝起きたら、そのまま車で出勤しました。道が悪く、迂回路も多いので、利用者さんの送迎はいつもだったら40分の道が4時間……。今でも施設には34人の利用者さんがいますが、私たちが働かないとどうなるかは分かりきっているでしょう。津波警報がテレビで流されたとき、利用者さんを置いて逃げ出そうという考えが一瞬よぎりましたが、彼らの顔を見たらそんなことはできませんよ」

 復興に向けた動きが徐々に報じられ、安堵する瞬間もある。しかし、その裏には働く被災者の姿があることを忘れてはならない。

(取材・文=橋本悠太、橋爪健太/日刊ゲンダイ

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