著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

よく効く薬ほど副作用は強い「高齢者には薬を処方しない医師」が理想

公開日: 更新日:

 しかも高齢者は、薬の分解や代謝、排泄にかかわる肝臓や腎臓の機能が低下していることもあり、ひとつの薬でも体内に残る影響が強く、副作用が現れやすくなります。複数の薬だと、それらの相互作用によって、副作用もより強くなることをお伝えした通りです。ですから、この点でも、薬を出さない医師は、決してヤブ医者ではなく、患者さんのことを考えての治療と処方といえます。

 中日新聞は以前、がんでの闘病について医師と患者にアンケートをしたことがありました。最後まで闘うと回答した患者は9割を超えましたが、医師は2割。「治療をやり切って死にたい」の割合は、患者95%に対し、医師は51%でした。

 これだけの差が表れるのはなぜかというと、ひとつは抗がん剤の副作用が影響しています。医師はそのつらさを熟知しながら、患者さんにがんのガイドラインとして明記されている抗がん剤をステージごとに提案するものの、こと自分の治療となると、“自分としてはあんまり”という思いが働いているわけです。

 抗がん剤は極端なケースですが、高齢者が5種類以上の薬を服用すると、転倒しやすいなどの副作用が現れやすいことが指摘されています。不必要な薬を使うことなく治療する医師は、多剤併用による副作用の予防という点では、とても大きな意味があります。そんな医師はヤブ医者ではなく、信頼できる医師というふうに見方を変えるべきだと思います。

 そうすると、高齢者にとってよい医師の姿が見えてくるでしょう。薬の見直しや減量に応じてくれる医師が、理想といえます。 (おわり)

【連載】和田秀樹 笑う門にボケはなし

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  3. 3

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  4. 4

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  5. 5

    (1)長嶋茂雄氏の「逆転巨人入り」は、銚子の料亭旅館の仲居さんの一言から始まった

  1. 6

    我が専大松戸がセンバツ王者で無敗の横浜に大金星も、達成感、喜びをあまり感じない理由

  2. 7

    永野芽郁「キャスター」“静かにフェードアウト説”一蹴!主演映画も絶好調で“稼げる女優”の底力発揮

  3. 8

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  4. 9

    長嶋茂雄さんは当然のように電車改札を「顔パス」しようとして、駅員に捕まった

  5. 10

    日本ハム最年長レジェンド宮西尚生も“完オチ”…ますます破壊力増す「新庄のDM」