現在の上野アメ横はカオス状態…平日昼間から酎ハイ呷る外国人や若者でごった返す

公開日: 更新日:

第60回 上野(台東区)①

 アタシたち還暦世代が子供の頃、「ララミー牧場」や「ローハイド」が大人気だった。

 リアルタイムではなく、おそらく再放送で見たのだろう。その後「スパイ大作戦」「ナポレオン・ソロ」にはまる。そんな海外ドラマに入れあげ、上野のアメ横通いが始まった。どういうことかって? 当時、アメ横にはモデルガンの老舗ショップが数店あったから。兄貴がいる友達の影響で、アタシもモデルガンにはまった。西部劇ファンはコルトフロンティア、スパイアクションファンはワルサーPPK。それぞれ好みが分かれた。残念ながら高くて手が届かずに、店で触らせてもらうのが精いっぱいだった。

 その20年後、アメカジストリート系ファッション雑誌にかかわり、またもやアメ横通いが始まった。当時はミリタリージャケット、いわゆる軍モノの革ジャンだ。はまった読者も多いでしょう。

 そして現在、アメ横通い第3シーズンを迎えようとしている。何にはまったかって? 酒場ですよ。先日、久々にアメ横をのぞいて驚いた。まさにカオス。センタービル側ではない昭和通り寄りの通りは今や、休日も平日も時間帯も関係なく人でごった返している。欧米、アジアからの観光客や日本の若い連中が真っ昼間から焼き鳥片手に酎ハイを呷っているのだ。

 JRの高架下をくぐる路地の角にもつ焼きの文楽と、これも老舗の大統領が向かい合い、両店とも客であふれている。一瞬、文楽の席がひとつ空いたので飛び込んだ。外にあるテラス席(?)と店内の仕切りがなく、ほとんど公道を私物化しているといった感じ。そのテラス席も30人ほどの若い客でイッパイだ。女性同士で飲んでいるグループもあり、みなスマホで写真を撮っている。きっとこういう店はバエルのだろう。気おされっぱなしのアタシの席に「オノミモノハナニシマスカ?」。アジア系の女子店員さんがやってきた。

■ヤキモノジカンカカルヨ

「酎ハイ(420円)と焼き物は……」

「ヤキモノジカンカカルヨ」。構わず、「あぶらホルモン(2本260円)、鶏モモ(2本360円)、豚バラ(1本260円)を全部塩で」(写真)。

「ゴメナサイ。モスグネ」

 柱の横の1人席から店外を観察していると、面白いことに気付いた。昼飲み目当てでやって来たであろうオッサンたちが、戸惑った様子で通り抜けていく。“俺たちのシマになんでこんな若い連中と外国人が来てるんだ”と、そんな心の声が聞こえるようだ。

 それにしても遅い。もう20分以上、待たされている。老害カスハラジジイになりたくないから優しく一言、「焼き物まだかな」。対応してくれたのはハノイ出身のヒエンちゃん。「ゴメナサイ。モスグネ」。5分ほどして、「オマタセシテスミマセン」。ヒエンちゃんが持ってきてくれたもつ焼きはことのほかうまかった。

 文楽は昭和33年創業。その頃はきっと、本物のアメリカ軍放出品が売られていたのだろう。飴屋が多かったからアメヤ横丁となったが、こちら側の通りはアメリカ物産が中心なのでアメリカ横丁、すなわちアメ横と呼ばれたという説もあるらしい。アタシらの世代はそっちの方がしっくりくるね。

(藤井優)

○やきとり上野文楽 台東区上野6-12-1 JR高架下

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束