(1)頻脈発作、冷や汗、震え…48歳でパニック障害になって考えたこと
病院の仕事なので、夜中に救急で呼ばれることもある。妻とは別の部屋で寝る習慣があったが、そのうちアカシジアといってひとりでは居てもたってもいられなくなり、夜中に外を散歩したことも。それでも落ち着かず、震えが止まらなくなると妻の部屋に行って、抱きしめてもらわなければ症状が改善されなくなった。
仕事自体はうまくいっていた。39歳で院長になり、4億円の累積赤字を抱えて潰れそうだった病院が、借金を返済し、日本中から見学者がひっきりなしに来るような場所に生まれ変わった。
自分は貧乏の中で生きてきたし、強い人間だと思っていたけれど、実際はそうではなかった。男性更年期障害もあったかもしれない。1日の睡眠時間は4時間半ほど。親の援助なしに医者になったことも、医者になってからも、少し、がんばり過ぎていたかもしれないという気がした。がんばり続けるのではなく、がんばったり、ときには、がんばらなかったりでいいのではないかと、そう思った。
それ以降、感情をコントロールできないときは、がまんしないようにした。笑いたいときには笑い、泣きたいときはがまんせずに泣いた。がんばらないでいると、肩の力がすっと抜けた。あえて「がんばらない」という積極的なスタンスをとることで、いつしかパニック障害の症状は改善され、目の前に無限の選択肢が広がった。新しい自分になれた気がした。