渋谷道玄坂「元祖くじら屋」鯨のフルコースでスタミナ補給
アタシは最近の渋谷を歩くのが怖い。いまだに工事をしているJRのホームが怖い。絶対に迷子になる地下道が怖い。スクランブル交差点が怖い。高い所から降りる長いエスカレーターが怖い。スマホを見ながら突進してくるヤツ、日傘をさしたまま人の多い歩道を闊歩する女子、自撮りしている外国人の集団。みんな怖い。だから、極力行かないことにしている。
アタシが渋谷に通っていたのは今から30~50年前。かつての東急文化会館6階の東急名画座か渋谷全線座でやっている映画が目的だった。「ひまわり」を見て泣きましたよ。高校、大学の頃はジァン・ジァンや屋根裏のライブに。そしてパルコがアートなイベントを連発する頃にはチョットおしゃれして公園通りを歩いた。渋谷はいわゆる文化・ファッション・サブカルの発信地だった。それが今では……。ジジイの愚痴はやめとこう。
そんなアタシがスタミナを補給するために伺ったのは渋谷が誇る名店「くじら屋」だ。渋谷のど真ん中に店を構えて75年。近くに移転したものの、109にあった頃の雰囲気は変わらない。アタシは小学校の給食に出た鯨の竜田揚げが大好物だった。そしていつも父親と行く酒場で父親が必ず頼んでいたのが鯨ベーコン。ベロッと大きくスライスしたものが5、6枚盛られ、洋がらしが添えてあった。当時、小学生だったアタシは、実はこの脂の匂いが苦手でね。好きになったのは酒を飲むようになってから。でも、その頃にはすでに高級食材としてなかなか口に入らなくなっていた。