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大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(3)樽酒を飲みに行く

公開日: 更新日:

 こうして調子が出たら、立川駅から中央線東京行きに乗って3つめ、国分寺へ行こう。南口に、「㐂八」という店がある。2020年に開店50年を祝った店は、今も、元気だ。湯豆腐で軽く満たした腹に、今度は、しみ込んでいくような樽酒を味わいたい。

 カウンターに剣菱の2斗樽がある。女将さんと、その娘さんと、軽く世間話をしながら、カウンターで相席になる他のお客さんの話にもそれとなく耳を傾ける。昔の映画、旬の食材、山歩き、文学、酒、あちこちに飛ぶ話が楽しい。その間に、枡に注がれた剣菱を、2杯。多い時には3杯。小皿に添えてくれる南米ウユニ湖産の塩など舐めながら飲む。塩で飲むとは星一徹のような……、と思うご仁は同世代か。ま、酔いどれの丹下団平には剣菱は高嶺の花だったかなと、これがわかるのも同世代か。

 創業以来、継ぎ足しのタレで煮ている身欠き鰊の佃煮をもらう。この濃厚な味が、樽香も爽やかな剣菱によく合う。うまいねえ……。店ができたのが55年前とすると、私は6歳。三鷹の鼻垂れ小僧だったことを思うと、笑いがこぼれる。往時の風格をとどめる店内は、渋く年を重ねているが、いつも清潔で居心地がいい。私は、この店のカウンターに1席もらって剣菱を飲む時間が、たいへん好きである。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

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