作家・阿刀田高さん 御年91歳「男のひとり暮らし」の現在を語る
不便を感じるのは爪を切るとき
──人の手を借りたくなるのはどんなときですか?
一番困るのは、足の爪を切ること。これは近所に住む孫娘にお願いしているけど、孫も忙しいときは2カ月も顔を出さないこともあるので。まあ、仕方がないから我慢する。ままならないことが多くなるけど、仕方がないことは仕方がないんですよ。
──ひとり暮らしで、不便を感じたことはありませんか?
月に1度、家事代行の人に掃除をお願いしています。バスタオルはクリーニングすると、ふわっと柔らかに出来上がるので、月に1度来てもらって出しています。ペットボトルも月に4本届けてもらう。「今日は宅配サービスが来る」と思うと、朝からずっとそのことが気になってしまう性分というのがあって。テレビの通販で買いたいものがあっても、不在のときが気になって、まあいいかと結局注文しない。宅配ボックスを設置したらいいんだろうけど、我が家の場合は奥まった場所になるので、宅配の人にわかりづらいから悪いなあと思って、何もしない。
──近ごろ気づいたことなど、ありますか?
最近ふと思うのは、小説家に向いていないんじゃないかな。僕はほとんど短編で、長編は少ない。長編は作家の神髄というか、思い入れが込められているもの。その長編が少ないというのは小説家に向いているのかどうか。
──短編に向く作家と長編向きの作家がいると思いますが?
長編作家にある強いこだわりがないのかもしれないね。
◇ ◇ ◇
毎朝6時ぐらいに起床。午後は相撲を見て、夕食後は昭和の歌謡曲を聴いたりする。春になれば愛するタイガースを応援しながら晩ごはんを食べ、10時くらいには寝床に入る毎日だ。
▽阿刀田高(あとうだ・たかし) 1935年、東京生まれ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年「冷蔵庫より愛をこめて」で小説家デビュー。79年短編集「ナポレオン狂」で直木賞。山梨県立図書館・名誉館長。最新刊は「90歳、男のひとり暮らし」(新潮選書)。



















