作家・阿刀田高さん 御年91歳「男のひとり暮らし」の現在を語る
阿刀田高(作家)
ブラックユーモアやミステリーを盛り込んだ短編の名手と称され、1979年に「ナポレオン狂」で直木賞を受賞。これまで900編以上の短編小説を執筆した。今月13日に91歳になったばかり。数年前に夫人が介護施設に入居して以来、自宅でひとり暮らしを続けている。人生の最終盤の楽しみ方をつづったエッセー「90歳、男のひとり暮らし」(新潮選書)が大人気だ。
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──毎日料理を作ったり、歌謡曲を楽しく聴いたり、漢字遊びや落語を〈読んで〉楽しみ、眠れない夜は百人一首を数えるなど、「何ごとも“まあまあならそれでいい”」と老いを受け入れているそうですね。そんな阿刀田さんに健康や長寿の秘訣をお聞きします。御年90歳を越えても自炊。きっかけは認知症を患った夫人が2023年に介護施設に入ってからとエッセーにあります。夫人は昨年の5月に永眠し、エッセーの最後に奥さまに対する深い愛情もつづられています。ひとり暮らしの献立で悩んだことはありますか?
30歳で結婚するまで、20代の7年間はひとり暮らしだったため、料理に覚えがないわけではないので苦にはなりません。メニューは毎朝ほとんど同じで、バタートースト1枚、あるいは餅1個の磯辺焼き。牛乳、トマト、バナナ、チーズ、それからブロッコリーと卵を茹でます。昼ごはんはお湯を注げば食べられるようなものとか。
──夜は肉や魚を焼いたり、湯豆腐、豚汁、おでん、親子丼、時には茶わん蒸しなど繊細なメニューもあります。正月は煮卵と手が込んでいます。
おでんといっても、近くのスーパーで購入したもの。袋に入っているおでんセットを温めたりします。親子丼は娘から「これって、本当に親子丼なの」と言われます。鶏肉に卵の組み合わせだから立派に親子丼だといっても娘はとりあってくれない。煮卵は正月に。家族から好評です。
──ご自分のキッチンには不足が多いかもしれないが、「これでいいのだ」とおっしゃっていますが?
のんきに構えていればそれでいいんです。
──エッセーの冒頭で「こんなに長生きするとは思っていなかった」とあります。健康に対する意識が高そうですね。
20代で肺結核を患い、薬のおかげで克服しました。そのため健康を理性的に考えるようになっていますね。結婚してから60年、毎年人間ドックで検査をしています。検査代で家が一軒建つでしょう(笑)。

















