再生医療より創薬支援 「iPS細胞」で製薬会社が狙う2兆円
世界をアッと言わせた成果が、いよいよ本格的に実用化されそうだ。京大iPS細胞研究所は、今秋をメドにストックされたiPS細胞の提供を始めるという。このiPSは特殊で、日本人の20%で拒絶反応を起こしにくい。そんな特殊iPSをさらに増やし、22年度までに9割をカバーするのが目標だ。
現在、目の網膜治療などに使われているiPSは自分の細胞から10カ月かけて培養。コストは1億円と高い。特殊iPSはすぐ使え、2000万円で済むため、「臨床に弾みがつく」(同研究所医療応用推進室・高須直子室長)ともっぱらだ。
iPS細胞はあらゆる細胞や臓器に分化するため、発見当初、「これさえあれば、病気の臓器はすべて再生できる」と不老長寿の未来が描かれた。シナリオ通りなら、薬は不要になり、製薬業界は大打撃を受けるが、細胞提供を喜んでいるのは、ほかならぬ製薬業界だという。
「iPS細胞の活用が有望視されているのは、再生医療よりも、創薬支援です。iPSはがん化のリスクがあり、再生医療に実用化するまでのハードルが高い。しかし、薬の“卵”の化学物質の効果をチェックする“試薬”としての利用なら、安全性や規制のハードルが低く、すぐ実現できる。製薬会社にこそ追い風です」(業界関係者)