<17>10%消費増税は戦艦大和特攻に等しき恐るべき不条理
不条理な大和特攻という大本営決定
この週末、ある雑誌の企画で吉田満氏の「戦艦大和の最期」という文学作品についての座談会を行った。この作品は、先の大戦末期、沖縄戦に特攻出撃した戦艦大和の、出撃命令が出てから撃沈されるまでの数週間を描いた物語だ。吉田氏はこの大和の乗船員で、上官の脱出命令を受ける形で九死に一生を得て奇跡的に生き残り、無事生還した後に、たった一日でその初稿全文を書き上げたという。
この作品には、この大和の出撃に対して「現場」が猛反発していた様子が克明に描かれている。大和には一機の戦闘機の護衛もなく、ほぼ丸裸の状態で何百何千というアメリカの雷撃機・攻撃機の猛攻を受けることが必定であり、一切何の戦果を上げること無く轟沈することは、誰の目にも明らかだったからだ。
しかし、そんな現場の大反対を完全に無視する形で、大本営からの大和出撃令は覆らなかった。そして案の定、誰もが予期した通り大和は徳之島沖で米軍機の猛攻を受け、攻撃開始からたった数時間であえなく撃沈した。
一気に3000人を超える特攻死をもたらした、この史上最大の「特効作戦」の全容を記した『戦艦大和の最期』からは、現場が如何に必死に闘ったかが克明に浮かび上がってくる。そしてわれわれ読者はその戦いに対して、その初稿の最後に書かれていたという『天下に恥じざる最期なり』との結語を繰り返す他にない。