オーダーメードTシャツで年商30億円 社長の挫折と反転

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プラスワンインターナショナル代表取締役 新開強さん

 モノがあふれる時代だからこそ、自分だけの一品が欲しくなる。そんな願望を気軽にかなえてくれるサービスで事業を拡大してきたのが、香川県に本社を構える「プラスワンインターナショナル」だ。オーダーメードTシャツのECサイトと実店舗を展開。2019年冬には渋谷の一等地に、客が自分でプリント加工やカスタマイズを体験できるコンセプトショップ「PRINTONE」をオープン。直後にコロナ禍に見舞われるも、その場でスマホなどで撮った写真を加工し、オリジナルTシャツなどに仕立てる「即日写真プリント加工サービス」が、月100件以上受注するなど好評だ。

■キムタク愛用ブーツが原点

 社長は香川県高松市に生まれ、地元高校を卒業後、埼玉県の独協大学に進学。しかし1年ちょっとで中退し、アメリカの大学に編入する。

「建前はもっと本格的に英語を勉強したかったから。本音は、いきなり大学を辞めてアメリカに行くというのがカッコよく思えたから。若気の至りでしたね」

 インターネットなど普及していない時代、図書館で留学関係の雑誌などをむさぼり読み、「なるべく日本人の少ない場所」ということでインディアナ州立大学を選んだ。日本人同士で群れたくなかったからだ。

 そして期待を胸に異国の地で新生活を送る中、日本の友人からある物を購入するよう頼まれる。

「アメリカの『レッド・ウィング』というブランドのブーツです。木村拓哉さんが履いて日本でブームになっていました。現地では100ドルぐらいでしたが、日本ではプレミアがついて4~5倍に高騰。なかなか手に入らない状況でした。その友人は僕がアメリカにいるのを知っていて、お土産に買ってきてくれというのです」

■20歳そこそこで起業

 それはやがて口コミで広がり、友達の友達のような会ったこともない人からも頼まれるようになった。そこで新開さんはビジネスとして手数料を取ることに。そして両親が営む高松市の喫茶店の一角に個人輸入の日本拠点をつくってもらい、セレクトショップをオープンさせた。これが同社の原点である。

「やがてブーツも下火になったので、次に目をつけたのがアメリカのストリートブランド『ステューシー』です。これも日本の若者の間で大人気でした。もはや大学などそっちのけで、仕入れ先を探す日々。ついには休学までして、ビジネスを成功させようと躍起でした」

勉強そっちのけで仕入れ先探し

 そんなある日、車でシカゴのダウンタウンまで足を延ばすと、果たして理想通りの店が見つかった。お目当てのステューシーだけでなく、他にも日本に持って帰ったら売れそうなブランドがズラリ。新開さんはダメもとで店員に直談判。

「日本でセレクトショップをやっている。ここの商品が気に入ったので買い付けしたい。ディスカウントしてくれないか」

 するとその店員はすんなりオーナーに引き合わせてくれた。

「会ってみるとオーナーは韓国人で、とても気さくな人でした。『いいよ、安くしてあげるよ』と。しかもその後、スタッフとして展示会に連れていってくれたり、私の分も卸値で安く注文させてくれたり、いろいろ良くしてくれましたね」

 日本での売り上げも好調。「これはイケるかも?」と油断したのが失敗のもとだった。

 その韓国人オーナーが独自に展開するプライベートブランドの日本総代理店に勢いでなったはいいが、趣味に毛が生えた程度のにわか輸入業者であった若者に、まとまった量の品物をさばくルートも才覚もなかった。なのに見えを張り、借金までして大量の在庫を抱えてしまったのだ。その額1000万円以上。20代前半には荷が重い金額だ。やがて資金もつき、失意のまま日本に帰国する。

 故郷の高松に戻ってからは、アメリカで学んだグラフィックデザインの技術を生かして、プライベートブランドのTシャツの製造販売を始めた。しかし待てど暮らせど客は来ない。もはや廃業かと諦めかけた時、思わぬチャンスが舞い込んできた。

失意の中、とある人物が店に

 オーダーメードTシャツやグッズなどのECサイトを展開する企業。「服は買うもの、選ぶものから、作るもの、カスタマイズするものへ」という価値を世の中に広げていきたいと、2019年冬に渋谷の一等地で体験型のコンセプトショップ「PRINTONE」をオープン。その場でスマホなどの写真を加工し、オリジナルTシャツなどに仕立てる「即日写真プリント加工サービス」が、月の受注100件以上とヒットしている。

 社長は大学を中退して渡米。留学しながらアパレルの個人輸入事業を始めた。滑り出しこそ、キムタクが履いて人気のブーツを扱い順調だったが、身の丈に合わない代理店契約を結んだことで総額1000万円以上の在庫と借金を背負ってしまう。

 失意の中帰国すると、故郷高松で経営していたセレクトショップ内でプライベートブランドのTシャツの販売を始めた。しかしそれもうまくいかず、まさに風前のともしびという2002年、とある人物が店に現れる。

「それはお客さまではなく地元の印刷会社の営業マンでした。ホームページ作成の売り込みでしたが、興味もお金もなかったので即座に断りましたが、気さくな雰囲気に好感を抱いて世間話をしていました。するとその営業マンが言うんです。『知り合いのラーメン屋が新しいユニホームを作りたいらしいんですけど、やりますか?』って。それが結果的にオーダーTシャツ200枚、合計30万円の商いにつながるのですから、運命というのは分からないものですね」

注文から購入、受け取りまでできるECサイトを自力構築

 首の皮一枚つながった。それまで客などほとんど来ず、来たとしても買わない自らのプライベートブランドTシャツは「独り善がりの代物だった」と反省。むしろ今回のようなお揃いのユニホームTシャツなどに大きなニーズがあるのではないかと気づくのである。

「単なるTシャツのプリントショップなら珍しくありませんでした。ですが、デザイン制作からオーダーメードで作れる店はまれ。さらに2年後、インターネット上で注文から購入、受け取りまで全てできるECサイトを自力で構築。ネット通販は当時まだ黎明期だったので、ここに勝機を見いだしたのです」

 今でこそ当たり前のネット検索連動型広告にもいち早く手を出した。もちろんネットだから場所に制限はない。高松市に本社を構える店に、全国から注文が相次いだ。

「今でも覚えています。最初にネットで見積もりの依頼をしてくれたのは、東京のアパレルショップでした。プライベートブランドを作りたいということでしたが、予算が合わなかったのか結局は注文にいたりませんでした。ですが、その後、立て続けに美容室や飲食店などから注文が入り、これはイケると思いましたね」

倍々ゲームで年商30億円企業に

 まさに時代の波に、手練のサーファーのごとく華麗に乗った。それまで最高年商900万円の店が、ECサイトを始めたことを契機に1年で6500万円になった。その翌年には1億8000万円。さらにその翌年には3億6000万円と、まさに倍々ゲームで突き進んでいった。

 そして年商10億を超えた2011年、渋谷に実店舗をオープン。その後も事業を拡大させ、2018年には実店舗数は38を数え、年間販売枚数は227万枚以上、売り上げはおよそ30億円の企業に育てあげた。

 満を持して2019年秋にコンセプトショップを開店したが、直後にコロナ禍に見舞われたのは前記の通り。それでも「本当にお客さまの目線に立ったサービスとは何なのか考え直すいい機会」と前を向く。

「肝として捉えているのが〈一緒に創り上げるブランド〉というコンセプト。我が社の商品は良い意味で半製品。お客さまが最後に手を加えることで完成品になるんです。これは時代のトレンドでもあり人間の創造欲求を満たす本質的なサービスでもあります。正直手間がかかって生産性は悪いのですが、お客さまの満足のために、ますます力を入れていきたいですね」

 街を歩いていたら同じ服を着た人とバッタリ……なんて時代は、もうすぐ過去のことになるのかもしれない。

(取材・文=いからしひろき)

▽新開強(しんがい・つよし)1975年、香川県出身。独協大学入学後、渡米しインディアナ州立大学へ編入。アメリカの輸入ブランド衣料を扱うセレクトショップを故郷の高松市にオープン。99年にプラスワンインターナショナルを設立。2003年に始めたオーダーメードTシャツ事業がヒット。ECサイトで事業を拡大し、11年からは実店舗も全国に展開。19年12月には渋谷の中心地に体験型コンセプトショップ「PRINTONE」を開業。その場で20分から加工・引き渡しが可能な「即日写真プリント加工サービス」が好評。 

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