著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

豊田自動織機(下)「次の道の発明」の目標は正しくも、達成は至難の業

公開日: 更新日:

 だが、無難なスタートとはいえなかった。佐吉の先妻と後妻との人間関係が暗い影を落としたからだ。先妻は喜一郎を産んだが、発明に夢中の佐吉のもとを去り、実家に戻った。佐吉は後添いを迎え、愛子が生まれた。愛子の婿養子となった利三郎が豊田家の当主として実権を握った。

 豊田家の嫡男・喜一郎と当主・利三郎は対立する。33(昭和8)年9月、喜一郎は織機内に自動車部を設置。豊田家の家督相続人で織機の社長でもあった利三郎が、これに猛反対した。

 喜一郎に味方したのが従弟(佐吉の甥)の豊田英二(のちのトヨタ自動車工業5代目社長)と異母妹の愛子だった。愛子は夫の利三郎に初めて反旗を翻し、「お兄さまが自動車のために会社を潰したって、お父さまは満足されます」と言って賛成に回った。

 すったもんだの末、自動車産業への進出を正式に決定した。37(昭和12)年8月、自動車部が独立してトヨタ自動車工業(現・トヨタ自動車)となる。初代社長は利三郎。喜一郎が社長に就くのは41年のことだ。


 トヨタは52年7月、喜一郎の嫡男、章一郎(のちの6代目社長)を取締役に据えた。これ以降、トヨタは喜一郎の家系が継承し、利三郎の系譜の人物がトヨタ自動車に入ることはなかった。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲