牛丼の吉野家が“ラーメン世界一”を目指すしかない切実事情…「第3の柱」に掲げるも“窮余の一策”
「牛丼一筋」は今や昔だ。吉野家ホールディングス(HD)が牛丼、はなまるうどんに次ぐ「第3の柱」にラーメンを掲げた。19日に2029年度までの中期経営計画を発表。ラーメン事業の売上高を29年度には400億円と24年度から5倍増、店舗数も4倍増の500店舗を目指すとブチ上げた。
売上高比率も24年度は4%に過ぎないが、29年度は13%に引き上げ。逆に牛丼は67%から61%に下げる方針だ。
「牛丼事業は頭打ち。窮余の一策です」と、外食ジャーナリスト・中村芳平氏はこう言う。
■「明日はホームランだ!」世代には牛丼一杯は重い
「原料の米国産ショートプレートにこだわる余り、円安で輸入コストが膨らんだ上、米価高騰も追い打ちです。並盛こそ税込み498円とギリギリ『500円の壁』を死守していますが、原価率は他の牛丼チェーンよりも高い。急速な労働人口減で『明日はホームランだ!』と喜んで食べていた世代もすっかり高齢化し、1杯が胃に重い。『牛丼小盛』や『ライザップ牛サラダ』を投入し、健康志向の女性やシニアを取り込む努力はすれど、効果に限界はある。伸びしろはもはや期待できず、売上高は業界トップの『すき家』に離され、とんかつ事業が好調な3位の『松屋』にも抜かれかねない状況です」