米トランプ暴走「武器供与一時停止」は打撃だが…ウクライナには「意外なチャンス」と識者が解説

公開日: 更新日:

 ロシアがウクライナへ軍事侵攻を仕掛けてから丸3年が経過したタイミングで、事態は大きく動こうとしている。ウクライナの最大の後ろ盾である米国のトランプ大統領が3日、武器供与の一時停止を決定。はしごを外されたウクライナが苦境に立たされるのは間違いないが、見方を変えれば、新たな道が開けるかもしれない。

  ◇  ◇  ◇

 トランプは、ウクライナに輸送中の武器やポーランドに保管している武器など米軍装備品の供与を一時停止。ウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂したことで強硬策に打って出た。

 米メディアによると、トランプ政権は「軍事支援が問題解決に貢献しているか確認するために一時停止し、再評価している」という。ゼレンスキーが停戦に向けた取り組みを行うまで停止を継続する構えだ。

 トランプの“裏切り”にウクライナは動揺を隠さない。支援の一時停止を受け、議会は声明を出し、米国の支援に関して〈ウクライナ国民にとって今まで以上に重要だ〉と強調。ゼレンスキーも自身のXで〈和平の道筋のためにも米国の支援を強く望む〉と訴えた。

 独シンクタンク「キール世界経済研究所」の調査によると、侵攻開始から昨年までの対ウクライナ軍事支出のうち、米国が49%(670億ドル)を、その他の国が51%(690億ドル)を負担したという。

 確かに、米国の支援なくして戦争継続は困難。米国が供与するミサイルなどが使えなくなれば、ウクライナが現在の戦力でロシアと対峙できるのは、もって「今夏まで」との見方も出ている。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)が言う。

「武器供与の打ち切りはウクライナにとって最大のピンチですが、同時にチャンスでもあります。米国が軍事支援の筆頭だったわけですが、これからは英仏を中心とする欧州へシフトするからです。結局、トランプ氏にしてみれば、和平もディールに過ぎません。しかし、欧州各国にとっては、ウクライナこそがロシアからの侵略を防ぐうえで必要不可欠。何が何でも支援しなければならない。プーチン氏は戦争を止める気はありません。いよいよ欧州の存続をかけた戦争という意味が強まるだけに、ウクライナにとって欧州各国の更なるコミットメントを得られるのはチャンスとも捉えられます」

最新の政治・社会記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 政治のアクセスランキング

  1. 1

    「高市早苗総裁」爆誕なら自民党は下野の可能性も…“党総裁=首相”とはならないワケ

  2. 2

    公明党が自民党総裁選に異例のドーカツ…「ポスト石破」本命の高市早苗氏&小泉進次郎氏に影落とす

  3. 3

    高市早苗氏は大焦り? コバホークこと小林鷹之氏が総裁選出馬に出馬意向で自民保守陣営は“分裂”不可避

  4. 4

    参政党に自民落選組がワラワラ“大移動”の可能性…「このハゲー!」豊田真由子氏が役員就任の無節操

  5. 5

    小泉進次郎氏を元首相3人&現首相が“雪崩支援”の怪情報…自民党総裁選「ジジ殺し」の本領発揮か

  1. 6

    9.8決戦を目前に過熱する「石破おろし」情報戦…飛び交う総裁選前倒し「賛成」の票読み

  2. 7

    維新またゴタゴタ…現職代議士3人が藤田執行部に反発し集団離党の「同床異夢」

  3. 8

    社民党参院議員ラサール石井氏に聞く 初の議員生活、芸能活動との両立、任期6年でやりたいこと

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    混迷の伊東市政…不信任の田久保市長が“論点ずらし”の議会解散→「悲劇のヒロイン」演出の悪あがき

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  2. 2

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  3. 3

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  4. 4

    今なら炎上だけじゃ収まらない…星野監督は正捕手・中村武志さんを日常的にボコボコに

  5. 5

    「高市早苗総裁」爆誕なら自民党は下野の可能性も…“党総裁=首相”とはならないワケ

  1. 6

    志村けんさん急逝から5年、更地になった豪邸の記憶…いしのようことの“逢瀬の日々”

  2. 7

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  3. 8

    広陵辞退騒動だけじゃない!「監督が子供を血だらけに」…熱戦の裏で飛び交った“怪文書”

  4. 9

    広陵野球部は“廃部”へ一直線…加害生徒が被害生徒側を名誉棄損で告訴の異常事態

  5. 10

    (3)阪神チーム改革のキモは「脱岡田」にあり…前監督との“暗闘”は就任直後に始まった