練習試合でコロナ対策打つも…プロ野球は「途中中止」の危機

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 6月19日の開幕は決まったが、本当に最後までやり切れるのか。

 2日、プロ野球12球団の練習試合がスタート。練習から、随所にコロナ対策が施された。

■第2ベンチにエアタッチ

 DeNA対楽天戦が行われた横浜スタジアムでは、試合前練習から選手を除く首脳陣、スタッフがマスクを着用。試合中は、ベンチ入りメンバーもマスクをしていた。いわゆる“密”を避けるため、DeNAは一塁ベンチのシートに「×」の紙を張ってソーシャルディスタンスを確保。楽天も含め、一、三塁側のエキサイティングシートを「第2ベンチ」として使用した。

 接触感染を防ぐために、ベンチで出迎える際のハイタッチは避け、左翼場外へ本塁打を放ったDeNAのオースティンは“エアタッチ”で出迎えられた。

 本拠地を使用する球団は、基本的に自宅通いだが、名古屋から東京への遠征となる中日は、新幹線の1車両を貸し切って東上した。

 プロ野球は専門家の提言を踏まえたガイドラインを作成。各球団はこれをもとにコロナ対策を講じているが、「対策をしながら練習試合12試合、公式戦120試合の計132試合を戦うには困難を伴う」との声が球界にはある。

■20週連続の6連戦

 今季の日程は一部しか発表されていないが、6月19日に開幕し、現在予定されているシーズン最終日は11月7日ごろ。日本シリーズは11月21日開幕が有力視されており、シーズン終了後から日本シリーズまでの間に、パ・リーグだけは試合数を短縮してクライマックスシリーズを行う予定がある。球界OBが言う。

「全120試合を消化するためには、6月19日の開幕から11月第1週まで、20週間連続で6試合ずつ戦う必要がある。今季はオールスターの中止に伴い、いわゆる球宴休みもなくなる見込み。ほぼ休みなしで連戦を消化し続けることになる。屋外で行う開幕カードのヤクルト対中日(神宮)、DeNA対広島(横浜)は今後の日程との兼ね合いで3連戦直後の6月22日の月曜日に予備日が組まれている。万が一、開幕カードが雨天中止になれば、いきなり9連戦を強いられることになる」

 ただでさえ一部の選手からは、「開幕までの時間が足りない」との声がある。練習自粛期間は2カ月におよび、チームの全体練習が再開されたのは最近のこと。それでも選手は練習試合に突入すれば、自然と実戦モードになる。練習試合は12試合しかなく、特に投手は肩肘への負担が大きくなり、ケガ人が増えるとの指摘もある。

東京は「第2波」の懸念

 日本国内でコロナ感染者が増え、再び緊急事態宣言が発令された場合や、選手にコロナ感染者が続出した場合は、シーズンを中断せざるを得なくなる可能性もある。2日は東京の新規コロナ感染者が久しぶりに30人を超え、「第2波」の到来が懸念されている。評論家の山崎裕之氏がこう言う。

「12球団は置かれた条件の中でやっていくしかない。ただ、暑くなってくる時期に開幕し、11月まで過密日程が続く。経験が少ない若手は調整の仕方に苦労するかもしれないし、特に投手は例年以上に体調管理が重要になる。何よりコロナの状況がどうなるか。東京でも感染者が再び30人を超え、第2波、第3波が懸念される。7月からお客さんを入れるというが、球場でコロナ感染者が出たら、大変なことになる。再び活動自粛になりかねない。経営者として一日も早くやりたい気持ちはわかるが、“見えない敵”と闘い続ける不安が、ずっとつきまとうシーズンになることは間違いありません」

 山崎氏が指摘するように、今季は例年以上にケガ対策を含めた選手のケアが重要になる。「ですが、選手のケアをしようにも、コロナ対策との兼ね合いが難しいのです」と、パ球団関係者がこう続ける。

「選手とトレーナーはかなり近い位置で接触するため、その時間をなるべく短くせざるを得ない。各球団、活動自粛期間はトレーナー室のベッドの数を間引きしたり、治療時間も10分、15分という単位で制限時間を設けてやってきたが、公式戦が始まればそうはいかなくなる。それでもコロナ対策を優先しなければならないため、選手全員をケアしきれない状況になる可能性があります」

 さらに選手たちは「禁欲生活」にも耐えないといけない。たとえば楽天は、この日から13泊14日の長期遠征。公式戦も当初は、セでは開幕から2週間、関東で集中開催するし、パでは1カード6連戦が組まれている。専門家の提言を踏まえたガイドラインによれば、遠征先の外食すら禁止。長期遠征を強いられる選手たちは、息苦しい生活を我慢できるのか。ちょっとでも気を許せば、グラウンド外にはコロナの危険因子がゴロゴロしている。

 いざ、開幕しても、プロ野球がシーズン途中で中止に追い込まれる要素はてんこ盛りだ。 

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