著者のコラム一覧
山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

現役引退した阪神藤川は打たれる姿も絵になる投手だった

公開日: 更新日:

 藤川球児が現役を引退した。敬意と親愛の情を込めて、あえて球児と書かせていただくが、最近の球児はたとえ公の場であっても、どこか柔和でちゃめっ気のある笑顔を振りまくことが多かった。全盛期の球児はどちらかというとチームメートにも諫言をいとわない物申すタイプで、特にシーズン中はいつも鬼気迫るような悲壮感のある顔をしていたから、今の彼を見ていると不思議な感覚になる。なんだか憑き物が落ちたような、そんな軽やかな印象を受けるのだ。

 おそらく、終盤の球児は来るべき引退の日に向けてチーム関係者や全国のファンに御礼行脚をしていたのだろう。プロの勝負師としては奇麗さっぱり区切りをつけて、残された時間で純粋に野球を楽しんでいるように見えた。

 一部で期待されていた250Sの達成も彼にとっては本当にどうでもよかったようだ。それはきっと「あきらめ」ではなく、積極的な生き方なんだと思う。その笑顔の裏では、相当な肩と肘の痛みがあったのだろう。

 そんな球児に思いを馳せると、当然いろいろなシーンが脳裏に蘇ってくる。ブレークした05年の80試合登板と一世を風靡したJFK時代の活躍。06年のオールスター第1戦で見せた予告ストレート、第2戦の清原和博との対決、07年の10試合連続登板、日本代表として挑んだWBCや五輪。記録面でも06年の38試合連続無失点や47回3分の2連続無失点、07年のシーズン46S(当時のNPB記録)は特に印象的で、全盛期の火の玉ストレートはまさに魔球だった。LINDBERGは私が中高生時代にはやったバンドだけど、球児によって蘇り、今や普遍的な存在になった。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    参政党が消せない“黒歴史”…党員がコメ農家の敵「ジャンボタニシ」拡散、農水省と自治体に一喝された過去

  2. 2

    極めて由々しき事案に心が痛い…メーカーとの契約にも“アスリートファースト”必要です

  3. 3

    遠野なぎこさんを追い詰めたSNSと芸能界、そして社会の冷酷無比な仕打ち…悲惨な“窮状証言”が続々

  4. 4

    ドジャース大谷翔平がついに“不調”を吐露…疲労のせい?4度目の登板で見えた進化と課題

  5. 5

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  1. 6

    清水賢治社長のセクハラ疑惑で掘り起こされるフジテレビの闇…「今日からシリケン」と“お触り続行”の過去

  2. 7

    カブス鈴木誠也「夏の強さ」を育んだ『巨人の星』さながら実父の仰天スパルタ野球教育

  3. 8

    千葉を「戦国」たらしめる“超過密日程”は今年の我が専大松戸に追い風になる手応えを感じています

  4. 9

    趣里はバレエ留学後に旧大検に合格 役者志望が多い明治学院大文学部芸術学科に進学

  5. 10

    参政党が参院選で急伸の不気味…首都圏選挙区で自公国が「当選圏外」にはじかれる大異変