クラブW杯決勝では惜しくも敗れるも「人の心を動かす」試合ができた

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森保代表監督からの的確なアドバイス

 鹿島の大健闘には「日本代表の森保一監督の的確なアドバイスがありました」と今でも感謝の気持ちを忘れない。

「鹿島が出場した前の年(2015年)に広島がCWCに出場しました。オセアニア代表のオークランド・シティ(オーストラリア)、アフリカ代表のマゼンベ(コンゴ)を倒し、準決勝で南米代表の強豪リバープレート(アルゼンチン)に0-1で惜敗しましたが、3位決定戦でアジア代表の中国・広州を2-1で退け、3位という好成績を収めました。広島の戦いぶりを見ながら『各大陸王者と戦っているうちに広島というチームが、攻守ともどもきちんと修正されていき、どんどん強くなっていった』ことを実感しました」

「1年後に鹿島を率いてCWCに出場するに当たり、(当時の)森保監督に連絡を取り、CWCをどう戦うべきか、などアドバイスをいただくチャンスを得ました。大会期間中は登録選手の変更はできないのでケガ人を出さないように細心の注意を払う、アフリカのチームは組織的な守備が苦手なので前半はしっかりと守って後半に攻撃を厚くすると効果的、アフリカ系の選手は手足が長いので<遠くから足がグイっと伸びてくるように出てくる>ので気を付けるーーなど具体的なアドバイスが、実際にもの凄く役に立ちました。本当に感謝しています」 

■古巣・大宮に対する「申し訳ない気持ち」

 2017年シーズンのJリーグに鹿島は「2016年J王者」として、そして「世界2位クラブ」という看板を背負って臨んだ。 

 しかし5月31日、リーグ戦の成績不振に加えてACLの敗退の責任を負う形で解任されることになった。

 約5カ月が経過した11月5日。古巣のJ1大宮アルディージャからオファーが届いた。残り3試合。J2降格の危機に瀕していたチームの窮地を救うーー。これが石井監督に課せられたミッションだった。

「急なオファーでしたので決断するまでに時間的な猶予はありませんでした。関わりのないチームでしたら、ためらうこともあったでしょうが、大宮の前身であるNTT関東でプレーしていましたし、旧知のスタッフをいました。何よりも残り3試合で監督を要請してきたチーム事情もよく理解できました。『ここは受けるべき』と決断しました。結局、1分け2敗でチームを救うことは出来ませんでした」

「期待に応えられなかったわけですが、翌シーズンも大宮で指揮をとらせていただくことになり、必ず1年でJ1に返り咲くんだ! という強い気持ちでシーズンを戦いました。残念ながらJ1復帰を果たせず、大宮には今でも申し訳ないという気持ちを持っています」

 2019年は一転して監督業とは、大きくかけ離れたところに身を置いた。

■給食センターの職員に中途採用された

 どこで何をやっていたのか? おそらく空前にして絶後。スポーツ界では前例もなければ、これから先、同じような経験をしようとする指導者は出てこないだろう。 

 茨城・鹿嶋市の学校給食センターの中途採用の面接を担当した職員が、目の前の椅子に座っている石井監督に向かって「石井さんって……あの鹿島アントラーズで指揮を執っていた……」と面食らったという。当然のことだろう(つづく)

(取材・文=絹見誠司/日刊ゲンダイ)

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