六川亨
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六川亨サッカージャーナリスト

1957年、東京都板橋区出まれ。法政大卒。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年にサカダイを離れ、CALCIO2002の編集長を兼務しながら浦和レッズマガジンなど数誌を創刊。W杯、EURO、南米選手権、五輪などを精力的に取材。10年3月にフリーのサッカージャーナリストに。携帯サイト「超ワールドサッカー」でメルマガやコラムを長年執筆。主な著書に「Jリーグ・レジェンド」シリーズ、「Jリーグ・スーパーゴールズ」、「サッカー戦術ルネッサンス」、「ストライカー特別講座」(東邦出版)など。

なでしこW杯8強止まり…スウェーデン戦で痛感した「強力1トップ育成」という課題」

公開日: 更新日:

スウェーデンはあえて密集地帯を作った

 特に右MFカネリード、右SBビョルン、トップ下のMFルベンソンらが右サイドからの突破を執拗に試みた。

 なでしこはボランチのMF長野風花、左MF宮沢ひなたらが戻って守備に加わったが、これこそがスウェーデンの狙いだったのではないか。

 あえて密集地帯を作り、たとえボールを失っても選手間の距離が近いため、素早いトランジション(切り替え)でボールを奪い返すことができる。局地戦に持ち込むことで日本が得意とするカウンターを封じることに成功した前半だった。

 スウェーデンは前半32分にFKから先制点を奪った。守備陣はしっかりと後ろに残ってブロックを形成。日本のプレスを受けるとシンプルに1トップのFWブラックステニウスにロングボールを当てるなど、決勝トーナメント一回戦でのアメリカ戦(延長戦を終えて0-0。PK戦5-4で勝利)の消耗を考えてプレーを選択していた。

 こうした状況の中、日本はいかにして打開策を見つけるべきだったのか。相手の密集網に引っかかってパスを繋げないのなら、それを飛ばしてミドルやロングのパスを1トップに当てるのもひとつの打開策である。

 しかし、残念ながらボールをきっちりと収められる1トップは、日本には見当たらないのが現状だ。WEリーグでは三菱重工浦和のFW菅澤優衣香が突出しているとはいえ、W杯や五輪で欧州勢を相手にすると劣勢は否めない。

■外国籍選手の日本国籍取得も視野に

 このことは今に始まった課題ではなく、そう簡単にクリアできる問題でもないが、やはり長身のGKとCB、そして強力な1トップの育成は継続する必要がある。

 WEリーグは選手を欧州やアメリカに輸出するだけでなく、多くの外国籍選手を受け入れ、将来的には彼女たちの日本国籍取得を視野に入れてもいいのではないだろうか。

 試合終盤は、選手交代から日本も猛攻を仕掛けて1点を返した。

 しかし、FW植木理子のPK失敗、遠藤が決定機に利き足の左足でシュートが打てず、パスを選択するなどの拙攻も目立った。1-2の惜敗にテレビを始めとする各メディアはなでしこジャパンの戦いを賞賛した。

 良いパフォーマンスを褒めること自体、悪いことではないと思う。しかし、選手には「勝てなかった現実」とそれに伴う「批判」にしっかりと向き合い、「次」への戦いに挑んで欲しい。なぜなら、常に結果が求められるプロ選手だからだ。

 30年前の1993年10月28日。

 日本代表はカタールのドーハで悲劇を味わった。しかし、帰国したDF柱谷哲二やFW三浦知良らは、再開されたJリーグで悲劇をひきずることなく全力で、ひたむきにプレーしてリーグを盛り上げた。

 同じように、なでしこジャパンの選手には26日から始まるWEリーグカップで躍動することで女子サッカーの魅力をアピールすることを期待したい。

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