ラグビーW杯 日本代表がチリに圧勝発進も…次戦イングランド戦へ露呈した「不安と課題」

公開日: 更新日:

 日本時間9日に開幕したラグビーW杯。10日に初戦を迎えた日本代表(世界ランク14位)は、チリ代表(同22位)を42-12で下した。前半3トライ、後半3トライを奪い、勝ち点4に加えて4トライ以上に与えられるボーナスポイント1点も獲得。幸先のいいスタートを切ったが、初出場のチリに2トライを許し、前半は接点で押し込まれるシーンも散見された。前回大会のベスト8を上回る「4強以上」の目標に向けて不安はないか。30年以上のラグビー取材歴を持つスポーツライターの永田洋光氏が斬る。

 ◇  ◇  ◇

 決して万全なパフォーマンスではなかった。

 1987年の第1回大会から10回連続出場のジャパンは、初出場のチリ以上に硬くなっていた。事前の強化試合で1勝5敗と結果を出せず、勝利への道筋が不透明だったことが、プレッシャーの一因になっていたのだろう。

 立ち上がりに攻め込んだところでボールを失い、チリにカウンターアタックを仕掛けられて先制トライを奪われた展開は、4年前に開幕戦の緊張からロシアにトライを奪われた場面に重なった。

 直後に相手の落球を拾ってアタックを仕掛け、LOアマト・ファカタバがトライを返してようやく落ち着きを取り戻したが、攻守にわたって連係の取れた動きができず、7対7の時間帯が長く続いた。

 30分にスクラムからWTBジョネ・ナイカブラが、41分にファカタバがトライを追加してチリを突き放しにかかるが、後半立ち上がりに出た凡ミスがふたたび流れを悪化させ、チリの健闘を引き出す始末だ。終盤に2トライを加えてなんとか面目を施したが、日本時間18日の次戦・イングランド戦に向けて、不安と課題は解消されないままだった。

 最大の不安は、前半のチリが元気な時間帯に接点で前に出られたことだ。明らかに出足の鋭さが欠けていた。イングランドは、チリを上回るフィジカルの強さを誇る。この日の前半のような防御では大きな綻びが生じることになるだろう。

 力強さに欠けたのは、キャプテンのナンバー8姫野和樹が、直前に左足のケガで出場できなくなった影響も大きい。後半途中から巨漢LOワーナー・ディアンズが入るとFWが力強さを取り戻したが、この試合の最優秀選手に選ばれたファカタバやサウマキ・アマナキのような機動力を持つLOと、強さと重さを備えた姫野やディアンズのようなFWをどう組み合わせるかが、イングランド戦のキーポイントになる。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • その他のアクセスランキング

  1. 1

    スポーツ界に時代錯誤の事案が多発する根本原因…新聞社後援イベントは限界と危うさを孕んでいる

  2. 2

    GPシリーズ初戦SP、坂本花織は2位発進も…集大成の今季に待ち受ける茨の道

  3. 3

    出雲駅伝7位完敗の青学大・原監督に直撃「ばけばけ大作戦の点数? 0点でしょう!(苦笑)」

  4. 4

    JOC山下泰裕会長の療養離脱からはや1年…三屋裕子代行でも“無問題の大問題”

  5. 5

    極めて由々しき事案に心が痛い…メーカーとの契約にも“アスリートファースト”必要です

  1. 6

    広陵高の暴力問題が話題だが…私は世羅高3年で主将になって、陸上部に蔓延する悪習を全て撤廃した

  2. 7

    柔道五輪金メダリスト・松本薫さんは2週に1度ファミリーフィッシングで堤防へ「胸の奥には大物への渇望がくすぶっています」

  3. 8

    “ミスター・ラグビー”と呼ばれた松尾雄治さん 西麻布で会員制バーを切り盛り「格安なので大繁盛だよ」

  4. 9

    テニスの団体戦を愛するキング夫人はドジャースの共同オーナー 大谷獲得でも猛プッシュ

  5. 10

    川合俊一らと男子バレー“御三家”だった井上謙さんは「発達障害の息子のおかげで学んだ」

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 2

    自維連立に透ける実現不能の“空手形”…維新が「絶対条件」と拘る議員定数削減にもウラがある

  3. 3

    自維連立が秒読みで「橋下徹大臣」爆誕説が急浮上…維新は閣内協力でも深刻人材難

  4. 4

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  5. 5

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?

  1. 6

    ポンコツ自民のシンボル! お騒がせ女性議員3人衆が“炎上爆弾”連発…「貧すれば鈍す」の末期ぶりが露呈

  2. 7

    日本ハム1位・伊藤大海 北海道の漁師町で育った泣き虫小僧

  3. 8

    米倉涼子の薬物逮捕は考えにくいが…業界が一斉に彼女から手を引き始めた

  4. 9

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  5. 10

    影山雅永JFA技術委員長の“児童ポルノ逮捕”で「森保監督がホッとしている情報」の深層