長嶋茂雄さんは美食家で、毎年開幕前は総勢100人近い球団関係者を高級中華料理店に招待してくれた
元巨人寮長の樋沢良信氏による「寮長が見た巨人軍」(第13回=2011年)を再公開
“燃える男”、“ミスター”の愛称で国民的人気を誇ったプロ野球元巨人監督の長嶋茂雄さんが6月3日、都内の病院で肺炎のために亡くなった。享年89。選手、監督として数々の伝説、逸話を残した「ミスタープロ野球」は、身近に接した者すべてにそれぞれの「長嶋茂雄像」を強く印象づけてもいる。日刊ゲンダイの連載で多くの球界OBが語ってきたその実像を再構成して緊急公開する。
前回から引き続き、今回は巨人での現役引退後はスカウトやチーフスコアラー、寮長などを歴任した樋沢良信氏による「寮長が見た巨人軍」(第13回=2011年)を再公開。本文中の年齢・肩書きなどは当時のまま。
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長嶋茂雄さんは美食家で、監督時代は毎年開幕前にコーチや選手、裏方も含めて100人近いチームの人間を、高級中国料理店に招待。フカヒレやツバメの巣、熊の手のひらなどを振る舞ってくれた。
そういうときの長嶋さんは、驚く選手やチーム関係者の顔を見渡して、「どうだ? 食ったことないだろう!?」と実にうれしそうな顔をする。何十年物という甕に入った紹興酒も用意され、「これも高いんだぞー」とまたニコニコ。自分はチビチビと口をつけるだけで、感激する周りの反応を楽しんでいるようだった。