玉木正之氏がCSシステムをバッサリ!「NPBと12球団は既得権益の死守しか考えていない」
「NPBはほぼお飾り。統括組織としての力がない」
──CSはもともと公式戦の消化試合を減らすために導入された。下手に改革をすると、チケット収入が減る恐れもある。
「だからNPBや12球団の中には条件付きであってもCSを行わない、という選択肢はないのでしょう。確かに現在のプロ野球は各球団がイベントを行い、CS進出争いもあって球場には多くのお客さんが足を運んでいる。しかし、いくら満員が続いたとしても、最大収容人数以上のお客さんを球場に呼ぶことはできない。チケット収入だけでは頭打ちだからこそ、NPBは放映権料などでビジネスをしなければいけないのですが……」
──NPBの放映権料は総収入の15%程度と、MLBの35%に対して規模が小さい。
「読売新聞などをはじめ、プロ野球に関わるオールドメディアしかり、各球団が自分たちの既得権益を守ることしか考えていないからです。パは6球団が合同で『パ・リーグTV』を運営していますが、セは巨人などの反対もあり、セ・リーグTVは作れない。NPBもほぼお飾りなので、統括組織としての力がない。
結局、日本のプロ野球界は企業野球から脱却できていないのです。各球団は自分たちが潤うことばかり考え、『どうすれば野球界が良くなるか』と考える者が運営サイドにいない。メディアの役割としては、今回のCSについて『制度がおかしい』で終わらせず、『なぜそんなおかしな制度を変えられないのか』と踏み込むことが肝要なのです」
(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ)
▽玉木正之(たまき・まさゆき) 1952年、京都市生まれ。東大教養学部中退。ミニコミ出版の編集などを経て、フリーの雑誌記者に。82年「月刊現代」に「阪神ファンは奇人変人マゾ集団」を発表し、署名原稿デビュー。日本で初めてスポーツライターを名乗る。音楽、映画、演劇の評論も手がけ、多くのテレビ番組に出演。野球の著書多数。