「国際ドラフト問題」は労使交渉の行方を左右する…2021年はロックアウトの一因に
一方、特にドラフトの指名対象の選手たちにとってみれば、競争相手が増えることになる。選手登録枠の拡大がない限り、ドラフトで指名されたとしてもマイナー・リーグから大リーグに昇格する機会が失われかねない。
また、入札制度の対象となっていない中南米の選手たちにとっては、ドラフトの上位で指名されれば多額の契約金を得られるかもしれないものの、下位指名の場合は現在よりも少ない金額しか手にできない可能性がある。
前回の労使交渉の際にドミニカ共和国出身のフェルナンド・タティス・ジュニア(パドレス)が「ドミニカ共和国やカリブ海各国の野球が壊滅する」と国際ドラフトに強く反対したのも、こうした事情が背景にある。
相手が最も嫌がる条件を提示し、自らに有利な結果を手にするのは、交渉の基本である。
21年にロックアウトが起きたのも、経営者側が国際ドラフトの導入を主張し、選手会が受け入れを拒否し続けたことが一因であった。
しかも、これまで経営者側は交渉ごとに年俸総額制と国際ドラフトを使い分けることで、ぜいたく税の対象となる年俸総額の基準額や選手の最低年俸の引き上げ率を抑えてきた。
果たしてこれから本格化する労使協定の改定では、経営者がいずれの条件を示すのか、選手会が年俸総額制を拒むために国際ドラフト問題で譲歩するのか、あるいは労使ともに妥協するのか、交渉の行方が注目される。



















