土用の丑の日に「環境」を考える編

公開日: 更新日:

 そこで目をつけられたのが、クロコの前段階のシラスである。当時の日本では、あらゆる河口や内湾にシラスが泳いでおり、クロコの何千倍もの捕獲が可能だった。しかし、重さがわずか0・2グラムでつまようじほどの大きさしかなく、当時までは誰も見向きもしなかったという。大正9年、愛知県淡水養殖研究所がシラスからの養殖に成功し、それから90年以上経つ現在でも、ウナギの養殖はシラスから育てて行われている。卵からの養殖はコスト面の問題もあり、いまだ研究室レベルでしか実現していない。

 昨年、環境省がニホンウナギを絶滅危惧種としたことに続き、今年6月には国際自然保護連合(IUCN)もニホンウナギを絶滅危惧種に分類した。現時点では、捕獲が禁止されているわけではない。しかし、ひと足先にIUCNから絶滅危惧種に分類されたヨーロッパウナギに対し、EUはシラスの国境を越える移動と輸出を原則禁止にした。この結果、ヨーロッパからシラスを大量輸入していた中国のウナギ養殖業が大打撃を受け、成鰻を中国から輸入していた日本にも大きな影響が及んだ。

 2013年、たった1匹のシラスウナギの価格が600円にまで達したという。今年、ウナギを食べる前にぜひ読んでおきたい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元小結・臥牙丸さんは5年前に引退しすっかりスリムに…故国ジョージアにタイヤを輸出する事業を始めていた

  2. 2

    ドジャース大谷翔平に「不正賭博騒動」飛び火の懸念…イッペイ事件から1年、米球界に再び衝撃走る

  3. 3

    遠野なぎこさんは広末涼子より“取り扱い注意”な女優だった…事務所もお手上げだった

  4. 4

    ヘイトスピーチの見本市と化した参院選の異様…横行する排外主義にアムネスティが警鐘

  5. 5

    ASKAや高樹沙耶が参政党を大絶賛の一方で、坂本美雨やコムアイは懸念表明…ネットは大論争に

  1. 6

    巨人・田中将大「巨大不良債権化」という現実…阿部監督の“ちぐはぐ指令”に二軍首脳陣から大ヒンシュク

  2. 7

    世良公則、ラサール石井…知名度だけでは難しいタレント候補の現実

  3. 8

    自民旧安倍派「歩くヘイト」杉田水脈氏は参院選落選危機…なりふり構わぬ超ドブ板選挙を展開中

  4. 9

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  5. 10

    フジの「ドン」日枝久氏が復権へ着々の仰天情報! お台場に今も部屋を持ち、車も秘書もいて…