原発利権と地方の現実が題材 最新作「雪炎」の馳星周氏に聞く

公開日: 更新日:

 犯罪の暗部や裏社会を描くノワール小説の第一人者である馳星周氏。最新作となる「雪炎」(集英社 1800円)では、原子力発電所のある町と、原発利権が題材となっている。物語は3・11から約1年後、市長選を間近に控えた北海道の道南市という架空の町が舞台だが、そこに描かれる原発立地自治体の問題と住民たちの葛藤は、あまりにもリアルだ。

 主人公の和泉伸は、北海道警の元公安警察官。現在は、とうに倒産した実家の牧場に戻り、ひとり世捨て人のような暮らしをしている。地元の道南市は、廃れた漁業と農業以外ろくな食い扶持がない田舎町だった。しかし1985年、ここに鵡川原発が誘致され、今では原子炉が3基にも増えている。

「3.11の後『週刊プレイボーイ』で浜岡原発のある静岡県御前崎市のルポをする機会があり、そこでいろいろと興味深い真実に突き当たりました。私はノンフィクション作家ではないし、そこで知ったすべてをルポするのは難しいけれど、物語としてならば書くことができる。何より、原発を抱える自治体で何が起きているのかを知ってもらう必要があると考え、私の故郷の近くに架空の町を設定して、本作の執筆に至りました」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  2. 2

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  3. 3

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  4. 4

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 5

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  1. 6

    半世紀前のこの国で夢のような音楽が本当につくられていた

  2. 7

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 8

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 9

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  5. 10

    プロスカウトも把握 高校球界で横行するサイン盗みの実情