「エウレカの確率」石川智健著

公開日: 更新日:

 経済学を使って犯罪を分析するというユニークな経済学捜査員・伏見真守の〈エウレカ・シリーズ〉の第2弾。

 大手製薬会社の向山製薬の研究所内で「研究所で人体実験が行われている」と告発する怪文書が発見された。犯人捜しを命じられたコンプライアンス課課長の玉木は容疑者を3人にまで絞る。そこで行き詰まっていたところ3人のうちの1人がアレルギー発作でショック死する。いったんは事件性なしと判断されたが、他殺の疑いがありとする特別捜査官の伏見が向山製薬内の捜査に着手する。玉木はお目付け役として伏見と行動を共にするが、およそ捜査官らしからぬ風貌と言動に面食らってしまう。しかも、アンカリング、フレーミング、ナッシュ均衡といった行動経済学の理論を犯罪に当てはめて犯人を捜すというのだ。伏見は玉木の戸惑いをよそに、独自に収集した情報を組み合わせていくことで事件の真相に迫っていく……。

 経済学の中でも心理学に近接する行動経済学を駆使するのがこのニューウエーブ・ミステリーの真骨頂。今後が楽しみ。

(講談社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?