失明しながら世界的格闘家を倒した日本人

公開日: 更新日:

「VTJ前夜の中井祐樹」増田俊也/イースト・プレス 1400円+税

 前回紹介した「百田尚樹『殉愛』の真実」にいたく感動し、突如として私の中で「ノンフィクションブーム」がやってきてしまった。1992年に発売されて「暴露本」と全米を震撼させた「マイケル・ジョーダン激闘のシーズン―誰も知らなかったNBAの内幕」という本まで読んでしまったほどである。その流れで大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」著者である増田俊也氏による本書を読んだ。「木村――」を読んでみたいものの、大作過ぎて尻込みしてしまう人は、本作をまずは読んでみてはいかがか。

 1995年、大学3年生だった時、プロレス研究会に所属していた私は部室で仲間とともに、異様に興奮をしながら一本のビデオを見ていた。これぞ日本の総合格闘技の幕開けともいえる「バーリトゥードジャパンオープン95(VTJ95)」という格闘技イベントである。

 顔面を腫らし、目を潰されながらも身長198センチの格闘家、ジェラルド・ゴルドー(オランダ)の脚に絡みつく170センチの小柄な日本人。これが本書に登場する中井祐樹だ。最終的にヒールホールドで勝利するのだが、中井の勝利がなかったら、これほどまでに日本で総合格闘技のブームが来ることはなかったかもしれない。中井は2回戦も勝利し、決勝戦では「400戦無敗男」ことヒクソン・グレイシーに1Rで敗北する。だが、ヒクソンは中井への敬意を持ち、今年2月に発売された「ゴング格闘技」で2人の対談が実現した。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か