「葬送の仕事師たち」井上理津子氏

公開日: 更新日:

 アメリカでは7~8割の遺体に行われているというエンバーミング。これによって、亡くなった人が背広姿で椅子に座り、弔問者が握手をする形式の葬式もあるとか。日本でも、エンバーミングした亡夫とドライブした人もいるという。

「最もびっくりしたのは、火葬場職員が火葬炉の裏の小窓から鉄の棒で遺体を動かし、『きれいに焼く』努力をされていたこと。『誰にも見送られない孤独死の人であっても、自分たちがきちんと火葬すると、ちゃんと見送れる』と聞き、さすがプロと思いました。お偉い先生方の死生観に勝るとも劣らない、現場のリアルな死生観です。私は、『みんな、死ぬまで頑張って生きよう』みたいな元気をもらいました」

 葬儀業界の市場は右肩上がりの1兆6000億円。家族葬、直葬、合理化、感動化と「お別れ」のスタイルが多様化する一方で、団塊世代が80歳代を迎える「超多死社会」が迫っている。尊厳をもって「送る」とは、を考えさせられる書だ。(新潮社 1400円)

▽いのうえ・りつこ 1955年、奈良市生まれ。タウン誌記者を経てフリーライターに。著書に「さいごの色街 飛田」「遊廓の産院から」「名物『本屋さん』をゆく」など。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」