面白サイエンス本特集

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「チンパンジーは365日ベッドを作る」座馬耕一郎著

 世の中の科学技術が進んでくると、さまざまなキーワードは耳に入ってくるものの、その中身はよく分かっていないことが少なくない。今回は飲み会で軽く話せそうなネタ満載の面白本から、今さら聞けないニュートリノ本まで5冊をご紹介!

 チンパンジーが作った樹上のベッドで寝てみたら気持ち良すぎて2時間半も昼寝してしまった著者は、チンパンジーの睡眠から人間の心地良い睡眠のヒントを探ろうと、アフリカの森で調査を開始した。

 食べ物を採取しながら移動して暮らすチンパンジーは、ほぼ毎日新たな樹上に新しいベッドを作る。彼らは木の枝を曲げたり折ったり重ねるなど一見無造作に作っているように見えるが、実は土台のように組まれた下層とマットの役割を果たす上層の2層構造になっており、その技はさながらベッド職人だ。皿状になったベッドは体をやさしく包み込み、少し高くなった縁が枕の役目を果たすという。

 ベッドとして人気なのは枝あたりの葉の総面積が広いルルマシアの木、ベッドを再利用するときは上に新しい枝を敷くなど、睡眠に貪欲なチンパンジーの知られざるベッド作りに迫る。(ポプラ社 800円+税)

「日本海 その深層で起こっていること」蒲生俊敬著

 日本列島の北西側に広がる日本海は、全海洋の0・3%というミニサイズの海。

 約2000万年前、ユーラシア大陸の東端に亀裂が入ったのが日本海の始まりで、当初は入り江のような海だった。

 現在の日本海は、(1)外部とつながる海峡が浅く地形的な閉鎖性が強い(2)対馬暖流が常に流れ込んでいる(3)冬季に北西季節風が吹き抜ける――という3つの特徴により、日本列島に大量の積雪をもたらし、日本海北部から北西部にかけての表面海水を冷却・高密度化して沈降させ、海水を上下にかき混ぜている。

 この循環により、酸素を豊富に含み良い漁場ともなっているが、温暖化に伴う温度上昇、酸素の供給量の低下、海洋の酸性化によって、日本の降雪量や漁獲量にも重大な影響を及ぼしている。

 本書は、日本の大都市圏の生活は、日本海に端を発する環境に支えられてきており、日本海の変化は、日本全体の環境変化を知らせる“炭鉱のカナリア”だと訴える。(講談社 860円税)

「ニュートリノって何?」青野 由利著

 物理学者の小柴昌俊氏が、カミオカンデと呼ばれる地上装置でキャッチし、ノーベル物理学賞を受賞したことで一躍有名になった「ニュートリノ」。昨年は、梶田隆章氏がニュートリノ振動の現象を初めてとらえ、再びノーベル物理学賞を受賞した。ところでニュートリノとは何なのか。なぜ、そんなにニュースになっているのか。そんな疑問が頭から離れない人に必読の書。

 ニュートリノとは、超新星爆発によって放出される宇宙を構成する素粒子のひとつで、電荷を持たずあらゆるものをすり抜ける性質を持っている。物理学者が積み重ねてきた標準理論によれば、ニュートリノは質量ゼロであるはずだったのだが、ニュートリノ振動が確認されたことから質量があるものであることが見えてきた。その研究の歴史から標準理論を超える謎解きまでを順に追いかけながら、現在進行形の研究の今に迫った一冊。(筑摩書房 860円+税)

「牧野富太郎なぜ花は匂うか」牧野 富太郎著

 日本植物学の父と呼ばれた牧野富太郎の植物を巡る随筆集。飯よりも女よりも植物が好きで「植物の愛人」と自称する著者は、思うがまま研究したいばかりに小学校を中退して独学で植物学に取り組み、94年の生涯を閉じるまで植物の世界に没頭した。本書では、食虫植物として世界的にも有名な水草のムジナモ、めでたいものの代名詞として必ず登場する松竹梅、ツバキやサザンカやトウツバキなどの花木のほか、著者が愛でた、たくさんの植物が登場する。

 表題「なぜ花は匂うか」の章では繁殖期の花についてつづられており、たとえば菊は一輪でひとつの花なのではなく、そりかえった一片一片がひとつの花であり、めいめいに雄しべ、雌しべを持った、たくさんの花が一本の茎の上に共同生活を営んでいることが明かされる。普段見過ごしている自然界の不思議さや造形の妙に目を開かされる。(平凡社 1400円+税)

「ちっちゃな科学」かこさとし、福岡伸一著

 子どもの理科離れが叫ばれる昨今、生命の不思議に驚嘆して科学する心はどのように育まれるのかを、人気絵本作家と生物学者がタッグを組んで考察。子どもの頃、どのようにして2人が育ってきたかを紹介しながら、子どもの真の賢さを伸ばすために必要なこと、文系と理系に分かれる日本の教育の問題点、子どもの好奇心を刺激する科学読み物というジャンル、科学教育のあり方などについて語る。

 たとえば温暖化問題や遺伝子組み換え問題など、人類が解決策をなかなか見いだせない状況に対して、かこ氏は狭小な国益追求、利潤至上主義、虚言や虚飾や裏切りなど負の側面を持つ人間という生物の特徴の3つが問題解決を長引かせていることを指摘。優しい語り口ながら、痛烈な批評の書ともなっている。2人のおすすめのブックガイド付き。(中央公論新社 800円+税)

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