「世界のお墓」ネイチャー&サイエンス構成・文

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 民族や宗教が異なる他国には、日本人の常識では計り知れない弔いの文化が存在している。本書は、特筆すべき世界各地のお墓を紹介する異色のビジュアルブック。

 厳粛な空間である日本のお墓は、墓石に使われる石の色のせいか、全体的にモノトーンな印象で、ややもすれば陰気くさい場所に感じられてしまう。しかし、世界に目を転じてみると、なんとも陽気なお墓があるのだ。

 ルーマニア北西部の小さな村・サプンツァのそれは、世界一陽気だ。

 80年前、親しい人を失った悲しみを癒やすような明るい墓標をと思い立った青年パトラシュが、故人の肖像画とその人生をつづった詩を刻み、色鮮やかに塗った木製の墓標を作り始めた。以来、彼の死後もその思いが受け継がれ、村の伝統になったという。墓標に描かれている肖像画はトラクターを運転している農民や、料理をしている女性、子供に勉強を教える教師など、ひと目で故人の人生がしのばれるものとなっている。

 対照的に、堂内が4万人分もの人骨で埋め尽くされているのはチェコ共和国のセドレツ納骨堂。シャンデリアやろうそく立て、そしてこの地にあった教会を買い取り、管理をするシュバルツェンベルク家のチェロのような形をした紋章(表紙)まで、すべて人骨で作られているそうだ。

 かと思えば、リトアニア共和国には、死者が葬られていない墓がある。5万本もの十字架が埋め尽くす「十字架の丘」と呼ばれるその場所は、1831年、ロシア帝国の支配からの独立を求めて蜂起して失敗した際に、処刑されたり、流刑された人々の遺体が戻らなかったため、遺族たちが墓の代わりに立てた十字架が始まりだった。ソビエト連邦統治時代に何度も破壊され撤去されたが、そのたびに瞬く間に再生したという。

 エジプトの「死者の町」は、居間や寝室、台所など本物同然の家の地下に遺体を納めた棺を安置する。そうした家型のお墓が並ぶ場所はまさに町そのものであり、現在ではこうした墓に貧困層が住み着き、死者と生者が共存をしているのだとか。

 その他、墓標と棺を兼ねた特別なトーテムポール「墓棺柱」が森の中に屹立するカナダの先住民族・ハイダ族のお墓、切り立った崖に棺桶をつるすフィリピン共和国・サガダ村のお墓、そしてオットセイたちが墓標のそばでくつろいでいる、南極海に浮かぶローリー島の気象観測基地「オルカダス」の隊員たちが埋葬された墓など。

 墓にはそれぞれの文化が持つ死生観が如実に表れている。観光旅行ではめったに訪ねることがないこうした墓を紙上散策する読者は、改めて自らの死と向き合うことになるだろう。(幻冬舎 1600円+税)


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