UFOにキングコング…大御所作家たちの“ヘンな本”

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 古書の魅力は、青春時代に読んだ懐かしい作品に出合えたり、表紙や活字のフォントから時代を感じることができるなど、さまざまある。そしてもうひとつ、大御所作家たちが若かりし頃に描いた、“ヘンな本”を発見できる点も挙げられる。

 古書山たかし著「怪書探訪」(東洋経済新報社 1800円+税)は、東洋経済オンラインで連載されていた「稀珍快著探訪」の書籍化。新たに書き下ろしたコラムとともに、“あの作家がなぜ!?”と言いたくなるような意外な作品たちを紹介している。

 気象学者としても知られ、日本を代表する直木賞作家の新田次郎。「八甲田山 死の彷徨」や「劒岳 点の記」などの山岳小説、大河ドラマの原作にもなった「武田信玄」など、数多くの重厚な傑作を生み出している。そんな新田氏による怪書の代表といえば、1967年刊行の「夜光雲」だ。ざっくりとしたあらすじとしては、女性にモテモテのパイロットがUFOに遭遇し、凄腕手品師のUFO研究家に利用されて大騒ぎするというもの。ストーリーはグダグダなのだが、さすが気象学者、UFO解明への科学的アプローチはさすがだと本書。

 大正・昭和における大衆文学の頂点に君臨する吉川英治が1935年に書き上げた「恋山彦」では、徳川綱吉の治世に、三味線奏者の娘・お品が山の神へのいけにえにされ、平家の落ち武者であり身の丈六尺もある大男に引き取られる。やがて、老中柳沢吉保の策略にはまった大男は、江戸の町で暴れまわり、吉保の別邸である六義園に乗り込み一番高い建物に登り……というお話。

 映画好きならピンとくるが、娘の名前をアンに、大男を類人猿に変えれば、この作品は「キングコング」。執筆の前年に見た映画に感銘を受けて書き上げたものだそうで、「種本に拠ってものを書かない方針」と明言していた吉川氏にしては珍しい作品だ。

 他にも、尾崎紅葉による桃太郎の後日談、井上靖が描く雪男など、ヘンな本のオンパレード。読後は古書店巡りをしたくなること間違いない。

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