「銀の猫」朝井まかて著

公開日: 更新日:

 実母がつくった借金を抱える出戻り25歳のお咲は、3年前から口入れ屋「鳩屋」の世話で「介抱人」として働いている。介抱人とは、身内に代わって年寄りの介抱を助ける奉公人のことで、長寿の町・江戸では重宝される仕事だ。

 ある日、咲に湯島天神下の料理屋・㐂重のご隠居の世話の声がかかった。行ってみると、隠居部屋は暗く、そして臭い。家の者は右半身が動かない隠居の㐂作をきちんと世話していなかった。かんしゃくを起こす㐂作に、咲は辛抱強く言葉を聞き、食事も食べやすいように工夫をする。やがて気力を取り戻した㐂作は、世話をないがしろにした倅夫婦を奉行に訴えると言い出した。(「銀の猫」)

 道楽三昧の隠居に振り回される「隠居道楽」など、切実な江戸の介護事情を背景にした8編の短編連作集。(文藝春秋 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木麟太郎をドラフト指名する日本プロ球団の勝算…メジャーの評価は“激辛”、セDH制採用も後押し

  2. 2

    日本ハム新庄監督がドラフト会議出席に気乗りしないワケ…ソフトB小久保監督は欠席表明

  3. 3

    ヤクルト青木“GM”が主導したバランスドラフトの成否…今後はチーム編成を完全掌握へ

  4. 4

    吉村代表こそ「ホント適当なんだな」…衆院議席3分の1が比例復活の維新がゾンビ議員削減と訴える大ボケ

  5. 5

    吉村代表は連日“ドヤ顔”、党内にも高揚感漂うが…維新幹部から早くも「連立離脱論」噴出のワケ

  1. 6

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  2. 7

    ブルージェイズ知将が温めるワールドシリーズ「大谷封じ」の秘策…ドジャース連覇は一筋縄ではいかず

  3. 8

    高市政権は「安倍イタコ政権」か? 防衛費増額、武器輸出三原則無視、社会保障改悪…アベ政治の悪夢復活

  4. 9

    今秋ドラフトは不作!1位指名の事前公表がわずか3球団どまりのウラ側

  5. 10

    亀梨和也気になる体調不良と酒グセ、田中みな実との結婚…旧ジャニーズ退所後の順風満帆に落とし穴