ワイセツ写真が露見してまた敗北 元民主党のエースの物語

公開日: 更新日:

 自業自得でキャリアを棒に振った男が再起をかけて人生に挑む。よくある話だが、ドキュメンタリーではまた違った趣になる。先週末から公開中の「ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ」がまさにそれだ。

 主人公はニューヨーク州議会で民主党のエースと目されたアンソニー・ウィーナー。攻撃的な弁論術で共和党を叩きのめし、派手好きのNY市民に人気だったが、ネットで知り合った女に送った自分の裸の写真が漏れて辞職。妻の助けで再起をかけてNY市長選に出馬しながら、またもワイセツ写真が露見して窮地に追い込まれる。

 監督はウィーナーの元選挙スタッフで、その身内めいた目から見たウィーナーの姿がなんとも哀れを誘う。メディアの寵児を自任した男がメディアに突き回され、一発逆転をもくろみながら沈んでゆく――。そのなんともいえない感覚がドキュメンタリーならではだろう。

 フランク・パートノイ著「すべては『先送り』でうまくいく」(ダイヤモンド社 1800円+税)は、このウィーナーの例が「急いては事を仕損じる」の失敗例として繰り返し語られる。映画も市長選での敗北に沈むところで終わるが、現実はここで終わりではなかった。実はウィーナーの妻はヒラリー・クリントン子飼いの腹心。昨年の大統領選の最終盤、FBIに押収されたウィーナーのパソコンから妻のメールが出てきたというのでまた騒ぎになり、無関係なのに苦境のヒラリーへのさらなる打撃になったのだ。

 これでもうウィーナーの再起はあり得ない。まさに苦くて重い、人生の教訓。
〈生井英考〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    草間リチャード敬太容疑者が逮捕…コンビニバイトと掛け持ちの苦労人だったが横山裕のセレクトに難あり?

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  4. 4

    俺と巨人ガルベスの大乱闘の一部始終…落合博満さんのヘッドロックには気を失いかけた

  5. 5

    マエケンの「DeNA入り」が急浮上! 古巣広島まさかのNO、巨人はマー君が足かせで動けず

  1. 6

    まさかの故障で失意の最中「お前はラッキー」…トシさんの言葉がなければ今の俺はいない

  2. 7

    DeNA次期監督候補に谷繁元信氏が浮上…南場智子オーナーのイチオシ、本人も願ったりかなったり

  3. 8

    米倉涼子の"体調問題"が各界に波紋…空白の1カ月間に一体何が? ドラマ降板情報も

  4. 9

    参政党の党勢拡大に早くも陰り…「聖地」加賀市で“親密”現職市長が惨敗落選の波乱

  5. 10

    公明党が「自民との連立離脱も辞さず」の背景…まさかの“国政撤退”もあり得る深刻事情