一人を究める本特集

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 昨今、なにかと肩身の狭い「ひとり」という単位。単独行動者を揶揄し、友達の数=人間の価値になりかねない時代だからこそ、「ひとり」の意味を究めてみてはどうだろう。そこで今回は、ひとりというテーマにこだわった本5冊をご紹介!

 いまや、ひとり暮らし世帯は珍しいものではないのに、ひとりでいると落ち着かない、間がもたないと感じる人々に向けて書かれた、ひとりで楽しい時間を過ごすためのヒント集。「家族と一緒にいるのが本当なのに……」「本当はパートナーと一緒にいるはずだったのに……」などという知らない間に自分が抱えている思い込みから自由になることで見えてくる、ひとりだからこその利点に焦点を当てている。

「ひとり上手」岸本葉子著

 本書は特に、途中でつれあいを亡くして元気や生きがいを失っている人に向けて「ひとりであることは義務からの解放でもある」というメッセージを送る。家族のために食事などの一日のスケジュールに縛られなくてすむことや、自分自身の趣味や興味をとことん追求できる自由さなどを改めて提示。さらに、不安への対処法として、具合が悪くなったとき用に枕元に置いておく「困ったとき用セット」や「特定の人に依存しないがゆるい近所とのつながりを持つ」などの方法も紹介。(海竜社 1300円+税)

「ひとりぼっちの辞典」勢古浩爾著

「ひとり=寂しい」という定型パターンにすべて落としこもうとする世間に疑問を呈し、人間の基本ともいえる「ひとり」について、独自の視点から問い直した辞典形式の「ひとり目線エッセー」。「あ行」から「わ行」まで、ひとりと関連がありそうな言葉をセレクトし、著者独自の解釈をユーモアたっぷりにつづっている。

 たとえば、「た行」に入っている「図書館」は、①「ひとり」にとっては必要不可欠の場所②ただし、本好きにかぎる。外出のきっかけにもなる。図書館に向かっているときはなんとなくうれしい――と定義。ほかにも、「現実」「物欲」「夕日」「吉本隆明」「わかってくれない」など、思わずニヤリと笑ってしまう言葉がずらりと並ぶ。

 ひとりのマイナス面ばかりを強調する社会に「群れるな、危険!」と立ち向かい、「ひとりこそ人間の基本」と訴える。外(世間)ばかり見ずに自分の内を見よ、ごく普通の顔をして自由に「ひとり」を生きていけという強いメッセージが心に響く。(清流出版 1500円+税)

「孤独死ガイド 一人で生きて死ぬまで」松田ゆたか著

 年をとって身寄りがなく一人暮らしをしている場合、(自分は誰にも知られないまま死んでしまうのではないか)という不安を感じることは少なくない。現在、日本では約3万人が孤独死を迎えているといわれており、孤独死は決して他人事ではないからだ。本書は、人の死を身近に見てきた医師がつづった、孤独死のためのガイドブック。「孤独死」には、実はいい面があると説いているのが秀逸だ。

 孤独死のメリットとして、人を悲しませずに死ねる、派手な葬式も必要なく出費がない、突然の葬儀で生きている人を振り回さない、相続争いが起きない、残された者の行く末を心配しなくていい、死後の評判を気にする必要がない、死ぬまでの日々を誰にも邪魔されない、余計な延命措置を受けなくて済む――の8つを挙げている。

 孤独死が嫌なのではなく、死体が発見されず放置されたままになることが問題になるのだとして、きれいに生きてきれいに死ぬためにどんな準備が必要なのか、詳しく解説している。(幻冬舎メディアコンサルティング 1100円+税)

「わが家で最期を。」千場純著

 たとえ家族と暮らしていても、人の死は誰にも代わることができない極めて個人的な最後の体験だ。家族が、そして自分が在宅での死を望んだとき、どうすれば後悔することなくあの世に旅立つことができるのか。

 本書は、在宅死率全国1位という横須賀でみとり医をつとめる医師が、今まで出合った「在宅死」の事例から学んだ、後悔しない在宅での死に方術を紹介している。

 たとえば、家族をみとる立場の人には、もしものときの選択肢として救命措置と延命措置があること、家でみとるつもりでいても終末期の区別がつかず救急車を呼ぶべきかどうか迷う例などもあげ、事前に医師や訪問看護師に助言を得ておく必要性を訴える。

 また死に目に会えるかどうかにこだわる理由として、残された家族が「世間さま」に後ろ指をさされないために過ぎないことも指摘し、大切なのは生きているときに寄り添う気持ちだとバッサリ。

 死を考えると、おのずと生き方を考えざるを得なくなるパラドックスに気づかされる。(小学館 1300円+税)

「ひとりで闘う労働紛争」橋本忠治郎・平賀健一郎・千葉茂著

 経済優先の規制緩和が進むなか、労働者の置かれた環境は悪化の一途をたどっている。1%の勝ち組の対極には、長時間労働や雇い止め、降格、減給、過酷なノルマなどに追われる労働者の姿があり、いつのまにかうつ病や過労死に追い込まれてしまうケースも少なくない。本書は、底なし社会といわれる今の労働環境のなかで、不当な解雇などの問題に巻き込まれたとき、どのように対処したらいいかを説いた書。

 ほとんど労働組合が機能しなくなっている今の時代、誰かが改善してくれるだろうといった人まかせの姿勢では改善は期待できない。不当な状況下で泣き寝入りしないために、労働者一人一人が声をあげるにはどんな手順を踏む必要があるか、Q&A方式で解説。ひとりで闘うためにはどんな法律を知っておく必要があるか、相談先はどこにあるか、働きかけ方のポイントは何かなど、孤独になりがちな労働者の強い味方になる情報が満載。(緑風出版 1900円+税)

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