「コックリさんの父」岡本和明・辻堂真理著

公開日: 更新日:

 1970年代、日本にオカルトブームが到来した。

 スプーン曲げ、コックリさん、心霊写真、透視予知……。超常現象の数々がメディアで繰り返し取り上げられ、人々の好奇心をかき立てた。 

 ある年齢以上の人なら、このブームの立役者、中岡俊哉の名を記憶しているだろう。生涯を超常現象の研究に捧げ、「テレパシー入門」「狐狗狸さんの秘密」「恐怖の心霊写真集」など200冊を超える本を書いた。

 自腹を切って海外の超常現象を取材し、超能力の実証実験に立ち会い、自らもテレビに登場して、超常現象の存在を世に広めた。

 中岡俊哉とは、何者だったのか。

 生前の中岡と交流のあった放送作家・辻堂真理と、中岡の次男で演芸研究家の岡本和明が、「オカルトの父」の人と仕事を、共同作業で評伝にまとめ上げた。

 その生涯は、前半から波乱に満ちている。本名・岡本俊雄。1926年、妾腹の子として生まれ、18歳の時、「馬賊を志して」単身満州へ。

 戦中を生き抜き、終戦後、東峰輝という中国名で八路軍に徴用。国共内戦で3度、死のふちに立ち、臨死体験をする。命をつなぎ、北京放送局のアナウンサーとして活躍した後、帰国。中国各地で集めた怪談・奇談を雑誌に執筆するようになり、超常現象研究家への一歩を踏み出した。

 中岡はあらゆる超常現象に真剣に向き合った。心霊手術もスプーン曲げも透視予知も、自分の目で見て、体験したことだけを書き、話した。それでも科学者の偏見は強く、しばしばマスコミのバッシングの矢面に立たされた。しかし、信念を曲げなかった。道半ばにして74歳で亡くなったが、人知を超えた世界に目を開かせてくれた功績は大きい。

(新潮社 1500円+税)

【連載】人間が面白い

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  2. 2

    紗栄子にあって工藤静香にないものとは? 道休蓮vsKōki,「親の七光」モデルデビューが明暗分かれたワケ

  3. 3

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  4. 4

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  5. 5

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  1. 6

    永野芽郁×田中圭「不倫疑惑」騒動でダメージが大きいのはどっちだ?

  2. 7

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 8

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動

  4. 9

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 10

    永野芽郁がANNで“二股不倫”騒動を謝罪も、清純派イメージ崩壊危機…蒸し返される過去の奔放すぎる行状